GMPとは何か?サプリを選ぶときに本当に見るべき製造基準の話

GMPとは何か?サプリを選ぶときに本当に見るべき製造基準の話

サプリメントの容器の裏側、原材料名の下あたりに、小さな丸いマークが押されているのを見たことがあるだろうか。「GMP」と書かれたやつだ。あれが何なのか、正直よくわからないまま飲んでいる人がほとんどだと思う。自分も編集の仕事を始めるまでは、なんとなく「安全そうなマーク」くらいにしか認識していなかった。

GMPとは、ざっくり言えば「この工場はちゃんとした手順で作っていますよ」を証明する製造基準のこと。成分が効くかどうかの話ではなく、作る工程の話だ。ここを勘違いしている人が本当に多い。

2024年の紅麹サプリの健康被害問題以降、サプリの製造基準をめぐる議論は一気に表舞台に出てきた。この記事では、GMPの意味、2つある国内認証団体の違い、パッケージでの見分け方、そして2024年以降の制度変更の動きまで、できるだけ公的資料ベースで整理する。

この記事の要点

  • GMPは「Good Manufacturing Practice(適正製造規範)」の略で、原材料の受入れから最終製品の出荷までの製造工程を一定水準で管理するための基準(厚生労働省『錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に関するガイドライン』2005年通知)
  • 日本の健康食品GMP認証団体は主に2つ。公益財団法人日本健康・栄養食品協会(日健栄協/JHNFA)と、一般社団法人日本健康食品規格協会(JIHFS)が運営している
  • GMP認定は工場単位で付与される。同じブランドでも製造委託先が変われば認証状態は変わる
  • 2024年の紅麹関連の健康被害を受け、消費者庁の検討会で機能性表示食品の製造工程におけるGMPに基づく製造管理の義務化が進められた(消費者庁資料・2024年)
  • GMPは製造品質を担保する仕組みで、成分の「効果・効能」を保証するものではない

毎日の習慣に取り入れやすい一本として、Five Point Detox も参考にしてみてください。

GMPとは何か、「作り方の約束」を文書化した仕組み

GMPは「Good Manufacturing Practice」の頭文字で、日本語訳は「適正製造規範」。原材料を仕入れてから、計量して、混ぜて、打錠して、袋詰めして、出荷するまで、その全工程を「決めた手順どおりに、記録を残しながら作る」ことを求める基準だ。

もともとは医薬品の世界で発展した。1960年代の米国で、医薬品の品質トラブルを防ぐための仕組みとして整備され、日本でも医薬品GMPとして法制化されている。健康食品分野にこの考え方が持ち込まれたのは比較的最近で、2005年に厚生労働省が『錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に関するガイドライン』を通知したのが契機だ。

ガイドラインの中身を読むと、やけに細かい。原材料をどう受け入れるか、保管温度はどうするか、作業員は入室前にどう手を洗うか、製造ラインの清掃手順、使った機械の点検記録、数十ページにわたって、工程のあらゆる場面での「決め事」を要求している。

要するに、GMPは「属人的に作らない」ための仕組みだ。熟練者の勘頼みではなく、誰が作業しても同じ品質になるように、全部を文書化してトレースできる状態にする。これが骨子。

医薬品GMPとの違い

医薬品GMPは法律で義務化されている。製造販売承認の条件になっているから、守らないと医薬品として売れない。一方、健康食品GMPはこれまで任意だった。ガイドラインに沿って運用し、第三者機関の認証を受けるかどうかは企業の判断に委ねられてきた。

ここが大事なポイントで、2024年までは「GMP認証なしのサプリ」が普通に流通していた。今もしている。認証を取るには工場の改修、文書整備、年次監査の費用がかかる。中小の受託工場だと数百万円から数千万円の投資が必要になるケースもあり、取るか取らないかは経営判断だった。

健康食品GMPが求める3つの柱

消費者庁と厚生労働省の資料を読み込むと、健康食品GMPの要求事項は大きく3つの柱に整理できる。

1つ目は原材料受入れの適正管理。入ってきた原料がちゃんと規格どおりのものか、識別・試験・記録して保管する。産地・ロット・入荷日・試験結果が紐づいた状態で保管されていないといけない。

2つ目は製造工程における一定の品質確保。計量、混合、造粒、打錠、充填、各工程で「どんな手順で、何を記録するか」を標準作業手順書(SOP)に落とし、そのとおりに作る。使った機械の洗浄、作業員の衛生、異物混入防止、交差汚染の防止、全部ここに入る。

3つ目は最終製品の規格確認と記録保管。出来上がった製品が、表示どおりの成分量・性状になっているかをロット単位で検査し、記録を一定期間保管する。何か問題が起きたとき、どのロットのどの原料まで遡れるようにしておく、いわゆるトレーサビリティだ。

この3本柱で、「人・施設設備・原材料」の3つを管理するというのが基本構造になる。

日本の2つのGMP認証団体、日健栄協とJIHFS

国内で健康食品GMPを認証している団体は、主に2つある。

公益財団法人 日本健康・栄養食品協会(日健栄協/JHNFA)

いわゆる老舗。健康食品業界の自主規制団体として長い歴史があり、GMP認定事業も2005年の厚労省ガイドライン通知を受けて早期に開始した。認定工場数は国内最大規模で、大手サプリメーカーの受託工場の多くがここの認定を取っている。

認証取得には工場審査、文書審査、年次の更新審査がある。公式サイトに認定工場リストが公開されているので、気になるメーカーがどこで作っているかを調べることもできる(これ、意外と知られていない)。

一般社団法人 日本健康食品規格協会(JIHFS)

2005年設立で、より国際基準に近い厳格な運用を打ち出している団体。米国のcGMP(current GMP)やコーデックス委員会の基準を参照しながら独自の規格を整備してきた経緯がある。輸出向け製品を手掛ける工場や、海外基準への対応を重視するメーカーが選ぶケースが多い。

どちらが上とか下とかの話ではなく、方針の違いだ。日健栄協は国内の普及・底上げを重視、JIHFSは国際整合性を重視、というざっくりとした棲み分けがある。

マークの見分け方

パッケージに表示されるGMPマークは、認証団体ごとにデザインが違う。日健栄協のマークは「GMP」の文字の下に「JHNFA」の表記が入っているのが特徴。JIHFSのマークは「GMP」の下に「JIHFS」が入る。小さく印刷されていることが多いので、ルーペが必要な場合もある。

ちなみに、どちらのマークも「このマークがついた製品が、認証工場で作られた」という意味だ。ブランドやメーカーに付くわけじゃなく、工場に付く。ここを混同すると判断を誤る。

GMPマークは「製品」ではなく「工場」に付く

この項の結論を先に書く。GMP認定は工場単位で付与されるので、同じブランドの別シリーズでも、製造を別工場に委託していれば認証状態が違うことがある。

サプリ業界の実態として、販売ブランドと製造工場は分離していることが多い。いわゆるOEM(受託製造)だ。有名ブランドでも、自社工場を持たず、複数のOEM工場に製造を発注している。シリーズAはX工場、シリーズBはY工場、ということが普通に起きる。

だから「このブランドはGMP取ってるから全部安心」という読み方は、厳密には正しくない。各製品のパッケージを個別に確認する必要がある。面倒だけど、そういうもの。

自分が去年、ある海外ブランドのサプリと国内メーカーのサプリを比較したとき、海外ブランドは全シリーズ共通でcGMPマークを付けていたのに対し、国内ブランドは一部シリーズだけGMPマーク付き、残りは無印だった。理由をメーカーに問い合わせたら「製造委託先が異なる」との回答。この構造は覚えておいて損がない。

2024年の制度変更、紅麹問題と機能性表示食品のGMP義務化

この章の結論から言うと、機能性表示食品については、GMPに基づく製造工程管理が実質的に義務化される方向で制度が動いた。背景にあるのは2024年春の紅麹関連サプリの健康被害問題だ。

消費者庁が設置した機能性表示食品を巡る検討会では、2024年5月〜7月にかけて複数回の議論が重ねられた。公開されている資料(消費者庁『機能性表示食品を巡る検討会』2024年7月16日 参考資料1-5など)を見ると、論点は大きく2つあった。1つは健康被害情報の収集・報告制度、もう1つが製造工程管理の強化で、後者で中心に据えられたのがGMPだ。

これまで機能性表示食品は、届出制度のもとでメーカー自身の責任で安全性・機能性を担保する建付けだった。製造工程についてはガイドラインで「GMPに準じた管理が望ましい」とされていたが、義務ではなかった。それが2024年の制度見直しで、サプリメント形状の加工食品についてはGMPに基づく製造が明示的に求められる方向に転換した。

これが何を意味するか

消費者側から見ると、少なくとも機能性表示食品を謳うサプリについては、GMP認証工場で作られていることが前提条件になっていく。移行期間を経て定着すれば、「機能性表示食品かつGMP無印」という組み合わせは市場から消えていくはずだ。

一方で、機能性表示食品ではない「いわゆる健康食品」については、依然としてGMPは任意のままだ。市場に出回るサプリの多くはこちら側に属するので、消費者が自分で見分ける習慣は引き続き必要になる。

GMPとHACCP、ISO22000の違い

食品の品質・安全関連の規格は複数あって、紛らわしい。整理しておく。

HACCP(ハサップ)は、食品の製造工程で発生しうる危害要因(細菌汚染、異物混入など)を予測し、重要管理点を定めて監視する手法。食品衛生の確保が主目的で、2021年6月から日本の食品事業者には原則としてHACCPに沿った衛生管理が義務化されている。対象は幅広い食品全般。

ISO22000は、HACCPの考え方をベースに、品質マネジメントシステムの国際規格(ISO9001)の構造を取り入れた食品安全マネジメントシステム。組織全体の管理体制を問う。

GMPは冒頭から述べているとおり、医薬品由来の規範で、原材料から最終製品までの品質を一貫して保証する仕組み。衛生だけでなく、成分の均一性、表示との整合性、ロット管理までカバーする。

整理すると、HACCPは「危害を防ぐ」、GMPは「品質を揃える」、ISO22000は「組織で管理する」というイメージが近い。サプリの文脈では、HACCPは最低限、GMPはさらに上の基準、と考えておけばいい。

GMPが保証しないこと、誤解されがちなポイント

この章の結論を先に書く。GMPは「表示どおりの品質で均一に作られている」ことを担保する仕組みであって、「成分が効く」ことを保証するものではない。

ここを混同する人が本当に多いので、繰り返しておきたい。GMP認証工場で作られたサプリだからといって、健康上の効果が保証されるわけではない。それはそもそもGMPの守備範囲ではない。

GMPが約束するのは、「ラベルに〇〇mg配合と書いてある成分が、ちゃんとそのmg数入っていて、ロット間でばらつきが少なく、異物や余計なものが混ざっていない」ということ。この「約束」自体はとても重要で、サプリの最低限の信頼性を支える土台になる。でも、効果効能の話とは別レイヤーだ。

逆に言えば、GMP認証がない工場で作られた製品は、この最低限の約束すらない状態で売られているとも言える。ラベルどおりの成分量が入っている保証も、ロット間のばらつきが抑えられている保証も、異物混入のリスク管理も、第三者の目では確認されていない。この差は結構大きい。

サプリを選ぶときの実践的なチェックポイント

ここまでの話をふまえて、実際に店頭やネットでサプリを選ぶときに何を見るか。

1つ目、GMPマークの有無を確認する。パッケージ裏面、原材料名の近くか、販売元情報の周辺に小さく印刷されていることが多い。日健栄協のマークとJIHFSのマークのどちらでもいい。両方とも国内で認められている認証だ。

2つ目、マークの直下の団体名を確認する。「GMP」の文字だけで、認証団体名が書かれていない場合、独自表記の可能性がある。正式な認証マークは必ず団体名とセットになっている。

3つ目、気になるなら認定工場リストで裏取りする。日健栄協とJIHFSはそれぞれ公式サイトで認定工場リストを公開している。製品の販売元に問い合わせて製造工場名を聞き、リストと照合すれば確実だ。少し手間だけど、長く飲むサプリなら一度やっておく価値はある。

4つ目、海外製品ならcGMPの表記を確認する。米国のサプリメントなら「cGMP」や「NSF」「USP Verified」などの第三者認証表記が参考になる。

5つ目、これは少し踏み込んだ話だけど、販売元の情報開示姿勢を見る。製造工場名、原料産地、試験成績書の開示、問い合わせたときに答えてくれるメーカーは、情報開示に自信がある。逆に「それはお答えできません」と言われたら、そのメーカーは選択肢から外していい。

なぜ日本でGMPはここまで遅れたのか、編集者としての視点

最後に、記事全体の客観性からは少し離れるけれど、取材を続けてきた立場から1つ考察を書いておきたい。

海外、特に米国では1994年のDSHEA法(栄養補助食品健康教育法)以降、サプリメント業界の自主規制が急速に整備され、2007年には米FDAによるサプリメント向けcGMPが法制化された。欧州でもEU食品サプリメント指令のもと、各国で製造管理の規範化が進んだ。

日本はこの流れから20年近く遅れている。健康食品の製造基準に関する厚労省ガイドラインは2005年に出たが、認証は任意のままで、2024年の紅麹問題でようやく機能性表示食品の制度見直しが動き出した。この遅れはなぜ起きたのか。

個人的な見立てとしては、日本の健康食品市場が「食品」と「医薬品」の中間の曖昧な領域で発展してきたことが大きい。食品だから医薬品GMPは適用されず、かといって一般食品ほど雑でもない。この中間性が自主規制を難しくした。そして、業界団体が複数に分かれていて、業界全体の統一基準を作りにくかった。

紅麹問題は痛ましい事件だったけど、結果として製造基準の議論を10年単位で前進させた。消費者としては、この流れを冷静に見つつ、GMPマークを「サプリを選ぶときの最低条件」として習慣化していくのがいいと思う。マークがあるから絶対安心、ではなく、「マークがないものは選ばない」というゆるい足切り基準として使う。これくらいの温度感がちょうどいい気がしている。

まとめ、GMPは「スタートライン」であって「ゴール」ではない

GMPは、サプリメントが最低限の品質で作られていることを示す基準だ。原材料の管理、製造工程の標準化、最終製品の検査、記録の保管、地味だけど、消費者が自分では確認できない部分を第三者が担保してくれる仕組みになる。

日本では日健栄協とJIHFSの2つの団体が認証を運営していて、どちらも信頼できる。パッケージのマークと団体名の表記を確認すること、気になるなら認定工場リストで裏取りすること、この2つを習慣にするだけで、サプリ選びの精度は確実に上がる。

一方で、GMPは成分の効果を保証するものではないし、健康を約束するものでもない。あくまで「ちゃんと作られている」ことの証明だ。その上で、自分の体調や目的に合うものを、食事・運動と組み合わせて選んでいく、このスタンスが現実的だと思う。

サプリを飲み続けるかどうかは、最終的には読んだ人それぞれの判断になる。この記事が、その判断の材料を1つ増やせたなら、書いた意味はあったかなと思っている。

カートに追加する