ハーブティーに含まれる植物成分:16種の素材をカテゴリ別に整理

ハーブティーに含まれる植物成分:16種の素材をカテゴリ別に整理

ハーブティーの袋の裏を見ると、知らない植物名がずらっと並んでいる。カモミール、ルイボス、エルダーフラワー、名前は聞いたことあっても、何科の植物でどこから来たのか、答えられる人は少ない。

この記事では、日本で流通しているハーブティー素材のうち、代表的な16種類を「花」「葉」「根・樹皮」「果実・種子」の4カテゴリに分けて整理した。それぞれの学名、原産地、歴史、含有される主な植物成分を、公的データと学術文献をもとにまとめている。

読み終わる頃には、茶葉のパッケージを裏返して成分表を見るのが、ちょっと楽しくなるはず。

この記事の要点

  • ハーブティー素材は植物学的には「花」「葉」「根・樹皮」「果実・種子」の4部位に大別され、使用部位によって抽出される成分の種類が異なる(FAO Herbs and Spices分類)
  • カモミール(Matricaria chamomilla)はキク科の一年草で、ドイツでは中世から民間で親しまれ、花部にα-ビサボロール等の精油成分を含む(European Medicines Agency, 2015)
  • ルイボス(Aspalathus linearis)は南アフリカ共和国セダルバーグ山脈の固有種で、2021年にEUの地理的表示保護(PDO)認定を受けた(欧州委員会, 2021)
  • ペパーミント(Mentha × piperita)はウォーターミントとスペアミントの自然交雑種で、1753年にリンネによって初めて記載された(Royal Botanic Gardens, Kew)
  • 日本のハーブティー市場は2022年時点で約1,560億円規模と推計され、茶飲料全体の中では小さいが安定的に拡大している(矢野経済研究所, 2023)

毎日の習慣に取り入れやすい一本として、Five Point Detox も参考にしてみてください。

そもそも「ハーブティー」とは何か、お茶と呼ばれているが茶葉ではない

ハーブティーとは、Camellia sinensis(いわゆるチャノキ)以外の植物を湯で抽出した飲み物の総称だ。緑茶・紅茶・烏龍茶が全て同じチャノキから作られるのに対して、ハーブティーは何百種類もの植物を原料にできる。

英語圏では「herbal tea」ではなく「tisane(ティザン)」や「herbal infusion」と呼ぶことも多い。厳密に言えばお茶ではないから。でも日本では「ハーブティー」の呼び方が定着していて、流通上もそれで通る。

国際標準化機構(ISO)は茶葉を「Camellia sinensis由来のもの」と定義していて、ハーブティーはこの定義から外れる。つまり法的には別物。これは意外と知られていない。

日本に本格的にハーブティーが入ってきたのは1970年代以降だ。それ以前にもドクダミ茶、ハトムギ茶、麦茶といった日本独自の「ノンカフェイン茶」はあったけれど、ヨーロッパ系のカモミールやペパーミントが店頭に並ぶのは、生活クラブ生協や自然食品店の広がりと歩調を合わせていた。

私自身、初めてカモミールティーを飲んだのは大学生の頃で、正直「薬草くさい」としか思えなかった。いま飲むと、青リンゴのような甘い香りがちゃんと鼻に抜ける。味覚は変わる。

カテゴリ1:花部を使う4種、カモミール・エルダーフラワー・ハイビスカス・ラベンダー

花から抽出するハーブティーは、揮発性の精油成分を多く含む傾向がある。花びらに香り成分が集中しているから。熱湯を注いだ瞬間にふわっと立ち上る香りは、花部ハーブの特徴だ。

カモミール(Matricaria chamomilla / Chamaemelum nobile)

キク科の植物で、流通上「ジャーマンカモミール」と「ローマンカモミール」の2種類がある。ジャーマンの方が青リンゴ様の甘い香りで、日本で流通しているティーの大半はこっち。

原産地は南ヨーロッパから西アジア。古代エジプトの医療書「エーベルス・パピルス」(紀元前1550年頃)に記載があるとされ、ドイツでは中世から修道院の薬草園で栽培されてきた(European Medicines Agency, Community herbal monograph on Matricaria recutita, 2015)。

花部に含まれる主な成分は、精油成分のα-ビサボロール、カマズレン(抽出時に青色を呈する)、フラボノイド類のアピゲニン。乾燥花を1杯あたり約1〜2g使用するのが一般的だ。

エルダーフラワー(Sambucus nigra)

レンプクソウ科(旧スイカズラ科)。ヨーロッパ原産の落葉低木で、6月頃にクリーム色の小花を無数に咲かせる。

イギリスの「エルダーフラワーコーディアル」が有名で、イングランドの夏の風物詩として、家庭で花を摘んでシロップを作る文化がある。ハリー・ポッターのダンブルドアが持つ杖も「エルダーの杖」と呼ばれていて、ヨーロッパでは昔から魔術的な象徴性を帯びた植物だった。

マスカットのような芳香が特徴で、含有成分はルチン、ケルセチンなどのフラボノイド、クロロゲン酸(European Medicines Agency, 2018)。

ハイビスカス(Hibiscus sabdariffa)

アオイ科。英名「ロゼル」、アラビア語で「カルカデ」と呼ばれる。流通するのは観賞用のハイビスカスではなく、食用種の肉厚な萼(がく)の部分だ。

原産地は西アフリカから中央アフリカの熱帯地域。古代エジプトのファラオも飲んでいたとされ、エジプトではいまも「カルカデ」として日常的に飲まれている。真っ赤な色の正体はアントシアニン色素で、酸味はクエン酸・リンゴ酸由来(FAO/WHO, 2019)。

ラベンダー(Lavandula angustifolia)

シソ科。地中海沿岸原産。日本では北海道富良野が栽培地として有名で、1948年に曽田香料が種子を導入したのが始まりとされる(富良野市資料)。

花部には酢酸リナリル、リナロールといった精油成分が含まれる。ティーとして飲む場合、使用量を控えめにしないと香りが強すぎて飲みにくい。目安は1杯に小さじ半分ほど。

カテゴリ2:葉部を使う6種、ペパーミント・レモンバーム・ネトル・ルイボス・ステビア・ローズマリー

葉部ハーブはカテキン類やフラボノイド、クロロフィルを多く含む。花部に比べると香りはやや穏やかで、代わりに味の輪郭がはっきりしているのが特徴だ。

ペパーミント(Mentha × piperita)

シソ科。学名の「×」が示す通り、ウォーターミント(M. aquatica)とスペアミント(M. spicata)の自然交雑種だ。1753年にスウェーデンの植物学者カール・フォン・リンネが「Species Plantarum」で初めて記載した(Royal Botanic Gardens, Kew, Plants of the World Online)。

葉部に含まれる主な成分はメントール(精油の約40〜50%)、メントン、1,8-シネオール。日本では北海道北見市が戦前から「薄荷の町」として知られ、1939年には世界の薄荷生産の約7割を占めていた記録がある(北見ハッカ記念館資料)。

意外と知られていないけれど、合成メントールの登場で日本の薄荷産業は壊滅的な打撃を受けた。いま日本で流通しているペパーミントの大半はアメリカ・インド産だ。

レモンバーム(Melissa officinalis)

シソ科。属名のMelissaはギリシャ語で「蜜蜂」を意味する。花に蜜蜂がよく集まることから。

原産地は南ヨーロッパから西アジア。古代ギリシャの医師ディオスコリデスが1世紀頃に著した「De Materia Medica」に記載がある。葉を揉むとレモンに似た香りがするのは、シトラール、シトロネラールといった精油成分による(European Medicines Agency, 2013)。

ネトル(Urtica dioica)

イラクサ科。日本語では「西洋イラクサ」。生の葉には細かい刺毛があって触ると痛いが、乾燥させると刺毛が無害化する。

ヨーロッパでは春の若葉を茹でてスープにする食文化があり、スコットランドの伝統料理「ネトルカイル」が有名。葉部にはクロロフィル、鉄、ケルセチン、クロロゲン酸が含まれる(European Medicines Agency, 2011)。鉄の含有量は乾燥葉100gあたり約41mgと報告されている(USDA FoodData Central)。

ルイボス(Aspalathus linearis)

マメ科。南アフリカ共和国の西ケープ州セダルバーグ山脈の、標高450m以上の限定された地域にしか自生しない固有種だ。他の場所に移植しても育たないことが知られている。

2021年、EUが「ルイボス/Rooibos」を地理的表示保護(PDO)として認定した。南アフリカ以外からの原料を使って「ルイボス」と名乗ることがEU域内で禁止された(欧州委員会 Regulation 2021/1041)。これはアフリカの農産物として初のPDO認定。

葉部にはアスパラチンという、ルイボスにしか含まれないフラボノイドが特徴的に存在する。他にノトファギン、ケルセチン、ルテオリン(South African Rooibos Council, 2022)。

ステビア(Stevia rebaudiana)

キク科。パラグアイ原産。原住民のグアラニー族は「カアヘエ(甘い草)」と呼んで、マテ茶の甘味料として使っていた。

葉に含まれるステビオール配糖体は、ショ糖の約200〜300倍の甘味を持つ。日本では1971年に守田化学工業が世界で初めて工業化に成功した。日本発の甘味料だ(厚生労働省 既存添加物名簿)。

ローズマリー(Salvia rosmarinus)

シソ科。地中海沿岸原産。学名は長年「Rosmarinus officinalis」とされてきたが、2017年の分子系統学的研究によってサルビア属に再分類された(Drew et al., Taxon, 2017)。古い図鑑を持っている人は、学名が違うので注意。

葉部にはロスマリン酸、カルノシン酸、1,8-シネオール、カンファーが含まれる。

カテゴリ3:根・樹皮を使う3種、ジンジャー・リコリス・シナモン

根と樹皮から抽出するハーブは、花や葉と比べて成分が濃厚で、味も強い。だから使用量は控えめ、抽出時間は長めが基本になる。

ジンジャー(Zingiber officinale)

ショウガ科。原産地はインドから東南アジアとされるが、野生種が発見されておらず、正確な原産地は特定されていない。栽培の歴史が長すぎて起源がわからなくなっている植物の典型だ。

日本には3世紀頃に中国経由で伝来したと推定される。平安時代の「本草和名」(918年)に「久礼乃波之加美(くれのはじかみ)」として記載がある。

根茎に含まれる主な辛味成分は、生の状態ではジンゲロール、乾燥・加熱するとショウガオールに変化する。この変化、知っておくと面白くて、生姜紅茶を温かく淹れるのと冷たく淹れるのでは、味わいも成分比も変わる(文部科学省 日本食品標準成分表2020年版)。

リコリス(Glycyrrhiza glabra / G. uralensis)

マメ科。流通上「甘草(カンゾウ)」とも呼ばれる。根に含まれるグリチルリチンという成分がショ糖の約150倍の甘味を持つ。

原産地は地中海沿岸から中央アジア。シルクロードを通じて東アジアにも伝わり、漢方薬の処方の約7割に配合される最重要生薬となった(日本薬局方)。

ただしグリチルリチンは過剰摂取すると血圧上昇や低カリウム血症を起こすリスクがあり、EFSA(欧州食品安全機関)は成人で1日100mg以下を推奨している(EFSA, 2010)。ティーで日常的に飲む分には問題ないが、ブレンドで含まれていることを意識しておきたい。

シナモン(Cinnamomum verum / C. cassia)

クスノキ科。「セイロンシナモン(C. verum)」と「カシア(C. cassia)」で成分組成が明確に違う。流通上「シナモン」として売られているものの多くは、実はカシアだ。

セイロンシナモンはスリランカ原産で、樹皮の内側だけを剥いで作るため薄く、巻いた時に層が見える。カシアは中国南部〜ベトナム原産で、樹皮全体を使うため厚く、巻いた時に一枚板状になる。見分け方として覚えておくと役に立つ。

カシアには「クマリン」という成分が含まれ、EFSAはTDI(耐容一日摂取量)を体重1kgあたり0.1mgと設定している(EFSA, 2008)。セイロンシナモンにはほとんど含まれない。

カテゴリ4:果実・種子を使う3種、ローズヒップ・フェンネル・カルダモン

果実・種子は、植物が次世代に残すために栄養を凝縮した部分だ。ビタミン類や脂溶性成分が多く、保存性も高い。

ローズヒップ(Rosa canina)

バラ科。英名「ドッグローズ」の実のこと。流通するローズヒップの大半はチリ産で、南米アンデス山脈の東斜面、標高1,000〜2,000m地帯で収穫される。

第二次世界大戦中、イギリスで柑橘類が不足した際、政府主導でローズヒップシロップが大量生産され、子どものビタミンC供給源として配給された記録が残っている(UK National Archives, 1941年Ministry of Food資料)。

果実にはビタミンCが乾燥重量100gあたり約500〜1,000mg含まれる(USDA FoodData Central)。他にリコピン、β-カロテン、ガラクトリピドのGOPO(ガラクトリピド)。

フェンネル(Foeniculum vulgare)

セリ科。地中海沿岸原産。古代ローマの剣闘士が試合前に食べたと伝えられる。

インドでは食後に「ムクワス」と呼ばれる種子ミックスを食べる習慣があり、フェンネルシードはその主役だ。種子に含まれるトランス-アネトールが甘い香りの正体で、精油の約70〜80%を占める(European Pharmacopoeia)。

カルダモン(Elettaria cardamomum)

ショウガ科。インド南部のケララ州と、グアテマラが二大産地。世界の生産量ではグアテマラが約60%でトップだ。意外に思うかもしれない。1914年にドイツ人のオスカー・クローファーが苗をインドからグアテマラに持ち込んだのが始まりとされている(International Trade Centre, 2020)。

重量あたりの価格ではサフラン、バニラに次ぐ世界で3番目に高価なスパイスとして知られる。種子に含まれる主な成分は1,8-シネオール、α-テルピニルアセテート。

16種を一覧できる早見表、科・原産地・使用部位

ここまで紹介した16種を、植物学的に整理すると以下のようになる。

キク科(3種):カモミール、ステビア、エキナセア※
シソ科(4種):ペパーミント、レモンバーム、ラベンダー、ローズマリー
マメ科(2種):ルイボス、リコリス
バラ科(1種):ローズヒップ
アオイ科(1種):ハイビスカス
イラクサ科(1種):ネトル
セリ科(1種):フェンネル
ショウガ科(2種):ジンジャー、カルダモン
クスノキ科(1種):シナモン
レンプクソウ科(1種):エルダーフラワー

※本文で紹介していないが代表的な素材として追記

シソ科が多いのは偶然ではない。シソ科植物は精油成分(モノテルペン類)を葉に豊富に蓄える特徴があって、香りの立つハーブの多くはこの科に属する。バジル、タイム、オレガノ、セージも全部シソ科だ。

植物の科が同じだと、含有される成分の系統も似る傾向がある。だからブレンドティーを選ぶとき、「シソ科同士」「キク科同士」で組むと香りの方向性が揃いやすい、というのは私自身がブレンドして感じた経験則。

一次情報にアクセスするための3つの入り口

ハーブティーの素材について、もっと一次情報に当たりたい人のために、信頼できるデータベースを3つ紹介する。

1. European Medicines Agency (EMA) ハーバルモノグラフ

EU圏で伝統的に使われてきた薬用植物について、科学的評価と伝統的使用の記録をまとめた公的文書。カモミール、ペパーミント、エルダーフラワーなど主要なハーブはほぼ網羅されている。英語だが、植物の学名・使用部位・含有成分の記載が正確。

2. 文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)

日本で食品として流通している素材の栄養成分データ。生姜、シナモン、ハーブティーの一部が収載されている。日本語で無料公開されており、PDFをダウンロードできる。

3. Royal Botanic Gardens, Kew — Plants of the World Online(POWO)

世界中の植物の学名・分類・原産地を調べられるデータベース。無料。学名の最新の分類に基づいているため、「ローズマリーの属名が変わった」といった情報もここでチェックできる。

こうした公的データベースを一度でも覗いておくと、ハーブティー関連の情報を見るときの「真偽の嗅覚」が変わる。パッケージの裏や通販サイトの説明文が、根拠のある話なのか、ふわっとした印象論なのか、区別がつくようになる。

最後に、「飲みながら調べる」が一番楽しい

ここまで16種類を駆け足で見てきた。情報量が多すぎて消化不良になった人もいるかもしれない。

私がおすすめしたいのは、全部を一度に覚えようとせず、今日飲むハーブティーの袋を一つ取って、その素材だけを調べること。学名を検索して、原産地を地図で確認して、歴史を1つ知る。それだけで、口に含んだときの味の受け取り方が変わる。

セダルバーグ山脈の霧の中で育ったルイボスの葉を、南アフリカから運ばれてきた一杯として想像しながら飲む。富良野のラベンダー畑の香りを、1948年に種子を持ち込んだ曽田香料の挑戦と重ねて飲む。背景を知るだけで、同じ飲み物が別の飲み物になる。

植物の名前を一つ覚えるたび、世界が少しだけ広く感じられる。それがハーブティーという文化の、一番地味で、一番確かな楽しみ方だと思ってます。

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