ステビアとは何か|南米原産の甘い草から生まれた天然甘味成分の正体と仕組み

ステビアとは何か|南米原産の甘い草から生まれた天然甘味成分の正体と仕組み

コンビニの棚で「カロリーゼロ」と書かれた炭酸飲料を手に取ったとき、裏の原材料欄に「ステビア」と小さく書かれているのを見たことがある人は多いと思う。砂糖じゃないのに甘い。でも人工甘味料でもないらしい。この「ステビア」という名前、聞いたことはあるけれど実際に何なのかと聞かれると答えに詰まる、という人がかなり多い印象だ。

自分も最初はそうだった。南米の植物らしい、くらいの知識で止まっていた。調べ始めると、これが思っていた以上に奥深い。グアラニー族が400年以上前から噛んでいた葉っぱで、学名はStevia rebaudiana Bertoni。日本では1970年代から使われていて、EUの食品添加物番号はE960。情報の層が厚い。

この記事ではステビアという素材について、植物としての素性、甘さを生み出す化学的な仕組み、そして世界各国での扱いまで、客観的な事実をベースに整理する。健康効果の話はしない。あくまで「ステビアとは何か」を知るための地図として使ってほしい。

この記事の要点

  • ステビアはキク科ステビア属の多年草Stevia rebaudiana Bertoniを原料とする天然由来の甘味素材で、原産地は南米パラグアイとブラジル国境付近の高地
  • 甘味の本体は葉に含まれる「ステビオール配糖体」で、主成分はステビオシドとレバウディオサイドAの2種類
  • 甘味度はショ糖(砂糖)の約200〜300倍で、体内でほとんど代謝されないため実質的に低カロリー
  • 日本では1970年代から食品添加物として使用され、既存添加物名簿に収載されている(厚生労働省)
  • JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)はADIとして体重1kgあたり4mg(ステビオール換算)を設定している

毎日の習慣に取り入れやすい一本として、Five Point Detox も参考にしてみてください。

ステビアとは何か|キク科の多年草から生まれた甘味素材

ステビアとは、南米原産のキク科ステビア属に属する多年草、Stevia rebaudiana Bertoniの葉から抽出される甘味成分のことだ。植物名そのものが「ステビア」として広く通用しているため、素材と植物の呼び方が同じになっている。

キク科と聞いて意外に思う人もいるかもしれない。レタスやゴボウ、ヨモギと同じ分類だ。葉の形は細長い楕円形で、縁にゆるい鋸歯がある。白い小さな花をつける。見た目はミントに少し似ている、と言う人もいる。実際、ステビアの苗はホームセンターのハーブコーナーで数百円で売られていて、家庭で育てることもできる。葉を1枚ちぎって口に入れると、舌の奥でしっかりと甘さが広がる。これが砂糖の数百倍の甘さを持つ葉だと知らずに噛むと、驚く。

植物学的な分類の正式名は Stevia rebaudiana Bertoni。「レバウディアナ」は、この植物を初めて体系的に記載したパラグアイの化学者モイセス・サンティアゴ・ベルトーニの助手だった化学者レバウディに由来する。発見者ベルトーニが1899年に学術報告を出したことで、ステビアは西洋の科学の文脈に入った。

学名の最後についている「Bertoni」はこのベルトーニのこと。学名のルールで、記載者の名前が末尾につく。つまりステビアという植物は、名前の中に発見・記載の歴史を抱えている。こういう素材は意外と少ない。

原産地はパラグアイの高地|グアラニー族の「カアヘエ」文化

ステビアの原産地は、南米パラグアイ北東部とブラジル南部の国境地帯、アマンバイ山脈周辺の高地だ。標高はおよそ200〜500m。亜熱帯の湿潤な気候で、川沿いの開けた土地に自生していた。

この地域に古くから暮らすグアラニー族は、ステビアの葉を「カアヘエ(Ka'a he'ẽ)」と呼んできた。グアラニー語で「カア」は葉や草、「ヘエ」は甘いという意味。直訳すると「甘い葉」。400年以上前から、マテ茶に葉を数枚入れて甘みをつけたり、薬草として煎じたりする文化があったとされる。マテ茶自体が苦いお茶なので、天然の甘味料として相性がよかったのだと思う。

興味深いのは、なぜこの植物がヨーロッパや日本に広く伝わるのに、発見から数十年かかったのかという点だ。ベルトーニが1899年に学術記載してから、ステビオシドの化学構造が決定されるのは1931年。フランスの化学者ブリデル(Bridel)とラベール(Lavieille)がステビオシドを単離した。しかし、第二次世界大戦と戦後の砂糖価格安定、そして当時はサッカリンという安価な人工甘味料が市場を占めていたことで、ステビアは長い間マイナーな存在にとどまった。

ここで一つ、個人的に面白いと感じた視点を挟む。ステビアが「甘さそのものを持つ葉」として西洋に紹介されたとき、西洋の食文化は砂糖という「結晶の甘さ」を前提に組み立てられていた。パンに振りかける、コーヒーに溶かす、ケーキに練り込む、どれも固体の砂糖を前提にした所作だ。葉から甘さを引き出すという使い方は、茶文化を持つアジアや南米の方が受け入れやすかった。日本がステビアを早期に食品添加物として採用した背景には、こうした食文化の相性があったのかもしれないと思っている。これはあくまで自分の推測だが、歴史の流れを見ていると説得力はある。

現在の主要生産国はパラグアイだけではない。中国が世界最大の生産国で、世界のステビア原料の多くを供給している。パラグアイ、ブラジル、インド、ケニア、日本の一部でも栽培されているが、商業生産の規模は中国が圧倒的だ。原産地と最大生産地が一致しない、よくあるパターンの素材でもある。

甘味の正体|ステビオール配糖体という化学的な仕組み

ステビアの甘さは、葉に含まれる「ステビオール配糖体(steviol glycosides)」と呼ばれる一群の化合物から生まれる。これが甘味本体だ。

ステビオール配糖体は、「ステビオール」という骨格に糖(グルコースやラムノース)がくっついた構造をしている。配糖体というのは、糖が他の分子に結合した化合物の総称。アントシアニンやサポニンと同じ仲間の構造パターンだ。葉には複数種類のステビオール配糖体が含まれていて、代表的なものだけでも10種類以上が同定されている。

中でも含有量が多いのが2つ。ステビオシドとレバウディオサイドA(Reb A)だ。葉の乾燥重量に対して、ステビオシドが5〜10%、レバウディオサイドAが2〜4%ほど含まれるとされる(品種や栽培条件で変動する)。この2つが商業的なステビア甘味料の主役。

甘さの質にははっきりとした違いがある。ステビオシドは甘さが強いが、わずかな苦味や後味の渋みを感じやすい。一方、レバウディオサイドAは甘さがクリアで、砂糖に近い自然な味わいがあると評価されている。このため、近年の高品質なステビア甘味料はレバウディオサイドAの含有率を高める方向に進化してきた。市販品で「レバウディオサイドA 97%以上」のような表記を見かけるのはこのため。

甘味度の数字も押さえておきたい。ステビオシドは砂糖の約200〜300倍、レバウディオサイドAは約250〜450倍の甘さとされている(評価方法や濃度で変動する)。少量で砂糖と同じ甘さが出せる、ということ。

そしてここが重要なのだが、ステビオール配糖体は人の消化管でほとんど消化・吸収されない。小腸をそのまま通過し、大腸で腸内細菌によってステビオールに分解され、肝臓で代謝されて尿中に排泄される。この経路の途中でエネルギー(カロリー)としてはほぼ使われない。だから「実質的にゼロカロリー」と表示される。

熱や酸に対する安定性も高い。pH3〜9の範囲で安定、200℃近くまで加熱しても甘味が失われにくい。これが清涼飲料から焼き菓子まで幅広く使える理由だ。砂糖の代替素材として考えたとき、調理適応性の広さは大きな強みになる。

日本と世界での食品添加物としての扱い

ステビアは日本で1970年代から食品添加物として使われてきた、長い使用実績を持つ素材だ。厚生労働省の既存添加物名簿に「ステビア抽出物」および「ステビア末」として収載されている(厚生労働省「食品添加物」)。

日本でステビアが商業利用され始めたのは1971年頃と言われている。当時、サッカリンの発がん性懸念が社会問題になっていた時期で、天然由来の代替甘味料への需要が高まっていた。日本の食品メーカーがいち早く商業化に動いたことで、日本は世界に先駆けてステビアを食品に取り入れた国となった。

海外での扱いも整理しておく。

EUでは、2011年に高純度ステビオール配糖体が食品添加物として承認された。食品添加物番号はE960。EFSA(欧州食品安全機関)が安全性評価を行い、使用基準を定めている(EFSA Journal 2010)。

米国では、FDAが高純度ステビオール配糖体(純度95%以上)をGRAS(Generally Recognized As Safe、一般的に安全と認められる)として扱っている。2008年以降、コカ・コーラ社やペプシコ社が自社飲料にステビアを採用したことで、米国市場でも一気に普及した。

国際的な安全性評価としては、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が2008年にステビオール配糖体のADI(一日摂取許容量)を設定した。体重1kgあたり4mg(ステビオール換算)というのが現在の数値。体重60kgの大人なら1日240mgまで、という計算になる。これは一般的な食生活で超える量ではなく、WHOの基準としては比較的ゆとりのある設定だ。

ここで一つ補足。「天然由来だから安全」「化学合成品だから危険」という単純な二項対立で見ない方がいい。ステビアはJECFAの安全性評価を経て国際的に使用が認められている素材で、その評価の根拠は植物由来かどうかではなく、ヒトでの代謝・毒性試験のデータだ。素材の素性と、安全性の根拠は別物として理解しておく方が、素材選びの判断軸として役立つ。

砂糖(ショ糖)との違い|甘味度・カロリー・使われ方の比較

砂糖(ショ糖)とステビアを比較すると、違いが鮮明に見える。整理するとこうなる。

甘味度。砂糖を1としたとき、ステビオール配糖体は200〜300倍。小さじ1杯の砂糖(約4g)の甘さを出すのに、ステビア抽出物なら十数mgで足りる計算になる。

カロリー。砂糖は1gあたり約4kcal。ステビオール配糖体は体内でエネルギーに変換されにくいため、使用量が極めて少ないこともあって、実質的なカロリー寄与はゼロに近い。食品表示上「ノンカロリー」「ゼロカロリー」の飲料に使われる理由はここにある。

血糖値への影響。砂糖は摂取後に速やかに血糖値を上昇させる。ステビオール配糖体は糖として代謝されないため、血糖値への直接的な上昇作用はないとされる。ただしこの点について特定の疾患の予防や治療を謳うことはできないので、あくまで代謝経路の違いという事実として押さえておく。

味の質。砂糖はまろやかで、立ち上がりがゆっくりで、後味がきれいに消える。ステビアは甘さの立ち上がりがやや遅く、持続時間が長い。そして品種や精製度によっては、わずかな後味の渋みや金属的なノートを感じることがある。レバウディオサイドAの含有率が高いほど、砂糖に近い自然な味わいになる傾向。

使われている食品カテゴリ。日本国内では、カロリーオフの清涼飲料、ノンシュガーのガム、低カロリーゼリー、糖質制限向けのお菓子、梅酒や漬物の調味料、たれ、ドレッシングなど、幅広い加工食品に使われている。コンビニの飲料棚で「カロリー0」と書かれた炭酸飲料を見たら、裏の原材料欄にほぼ確実にステビア、またはステビアと他の甘味料(アセスルファムK、スクラロース等)の組み合わせが書かれている。

自分も試しに、近所のコンビニで「カロリーゼロ」表記の飲料を7本手に取って原材料を見たことがある。そのうち5本にステビアが使われていた。日常の食生活にかなり深く入り込んでいる素材だということを、改めて実感した。

他の天然甘味料との違い|羅漢果・エリスリトールとの比較

ステビア以外にも、天然由来の低カロリー甘味料はいくつかある。代表的なのが羅漢果(ラカンカ)エキスとエリスリトール。それぞれ素性が違う。

羅漢果は、中国広西チワン族自治区が主産地のウリ科の植物。甘味本体は「モグロシド」と呼ばれるトリテルペン配糖体で、砂糖の約300倍の甘さを持つ。ステビアと同じく体内でほとんど代謝されない。味の特徴は、ステビアよりまろやかで後味に独特のコクがあること。中国では古くから生薬として使われてきた歴史があり、日本でも砂糖代替として市販の甘味料に配合されることが増えている。

エリスリトールは、糖アルコールの一種。トウモロコシのデンプンなどを原料に、酵母の発酵でつくられる。甘味度は砂糖の約70〜80%で、ステビアほど強くない。砂糖に近い使い方ができるのが特徴で、料理やお菓子づくりで「砂糖の代わりに同量入れる」という使い方がしやすい。ほぼカロリーゼロ(0.24kcal/g)で、血糖値も上がりにくい。

この3つは「天然由来の低カロリー甘味料」というくくりでは共通するが、素性も味も使い方も違う。市販の甘味料商品では、ステビアとエリスリトールを組み合わせて使うケースが多い。エリスリトールで砂糖に近い使用感を出し、ステビアで甘さを補強する組み合わせだ。それぞれの弱点を補い合う設計になっている。

素材選びの判断軸として覚えておくといいのは、「甘味度の強さ」「味の質」「使いやすさ(砂糖との置き換えやすさ)」の3つ。少量で強い甘さが欲しいならステビアや羅漢果、砂糖と同じ感覚で使いたいならエリスリトール、という大まかな使い分けができる。

ステビアの歴史年表|発見から世界展開まで

ステビアがどのように世界に広がったのか、時系列で整理しておきたい。素材の背景を知ると、商品棚で見かけたときの見え方が変わる。

400年以上前〜:パラグアイ・ブラジル国境地帯のグアラニー族が「カアヘエ(甘い葉)」としてマテ茶や薬草に利用。

1899年:パラグアイで活動していたスイス系植物学者モイセス・サンティアゴ・ベルトーニが、ステビアを科学的に記載。学名 Stevia rebaudiana Bertoni が確立される。

1931年:フランスの化学者ブリデルとラベールがステビオシドを単離し、化学構造の解明が始まる。

1970年代前半:日本の食品メーカーがステビアの商業利用に着手。1971年頃から食品添加物として使われ始める。サッカリンの安全性懸念が社会問題化していた時期と重なる。

2008年:JECFAがステビオール配糖体のADIを体重1kgあたり4mg(ステビオール換算)として恒久的に設定。同年、米国FDAが高純度ステビオール配糖体をGRASとして認める。コカ・コーラ社とペプシコ社が自社飲料に採用。

2011年:EUが高純度ステビオール配糖体を食品添加物E960として承認。

2010年代後半〜現在:発酵法(酵母によるステビオール配糖体の生合成)が実用化され、Reb MやReb Dなど希少な配糖体の大量生産が可能に。味の質がさらに向上し、飲料・菓子市場での採用が拡大している。

こうやって並べると、ステビアは「古くから使われていた素材」であり同時に「科学の進歩とともに精製技術が進化してきた素材」でもあることがわかる。400年の民族植物学的な歴史と、ここ50年の食品科学の歴史が重なっている。

ステビアに関するよくある疑問

Q. ステビアは人工甘味料ですか?

いいえ。ステビアはキク科の植物の葉から抽出される天然由来の甘味素材で、人工合成されたものではない。ただし精製度を高めるために抽出・精製工程を経ているため、「葉そのまま」ではなく「葉から精製した高純度の配糖体」が食品添加物として使われている。原料植物は自然のものだが、製品としては食品添加物という扱いになる。

Q. ステビアと砂糖、どちらが体によいですか?

どちらが体によいかは、食生活全体の文脈によるため一概には言えない。カロリーや糖質の摂取量を抑えたい場合にステビアを選ぶ、という使い方はされている。健康上の効果や予防を謳うことはできないため、あくまで「カロリーと糖質を抑えた甘味の選択肢」として考えるのが妥当。

Q. 妊娠中や子どもが摂っても大丈夫ですか?

JECFAが設定したADI(体重1kgあたり4mg、ステビオール換算)は、妊婦や子どもを含む一般集団を対象とした安全性評価に基づいている。通常の食品に使われている量であれば、過剰摂取の心配は少ないとされる。ただし個別の健康状態については、心配があれば医師や管理栄養士に相談するのが確実。

Q. 自家栽培のステビアの葉を直接料理に使ってもいいですか?

家庭でハーブとして楽しむ分には使われている。ただし葉そのままと精製された食品添加物では、味の質・甘さの出方・含まれる成分の比率が異なる。葉を直接使うとわずかな苦味や青臭さを感じやすい。茶葉のように少量を飲み物に加える使い方が、家庭菜園のステビアでは一般的。

素材の履歴を知ることで、選び方が変わる

ステビアという素材について、植物としての素性、甘さの化学的仕組み、歴史、世界各国での扱いまで、客観的な事実を軸に整理してきた。

素材のことを知ると、商品棚で原材料欄を見る目が変わる。「ステビア」の4文字の背後に、パラグアイの高地で育つキク科の多年草があり、グアラニー族が400年以上前から噛んでいた葉があり、1931年の化学構造解明があり、1970年代の日本での商業化があり、JECFAの安全性評価がある。素材の履歴を一つひとつ知ることは、自分の食生活を自分で判断する足場になると思っている。

甘味料をどう選ぶかは、最終的には読者それぞれの食生活の設計次第。ステビアを選ぶ人もいれば、エリスリトールを選ぶ人、羅漢果を選ぶ人、そして砂糖を続ける人もいる。どれも、素材の素性を知った上で選べば、納得感のある選択になるはず。この記事がその判断材料の一つになっていれば、書いた意味がある。

次に飲料を1本手に取ったら、裏の原材料欄をじっくり読んでみてほしい。「ステビア」の4文字が、少し違って見えるかもしれない。

【参考情報】厚生労働省「食品添加物」/ 公益財団法人日本食品化学研究振興財団「既存添加物名簿収載品目リスト」/ EFSA Journal (2010) Scientific Opinion on the safety of steviol glycosides / JECFA Monographs / FDA Food Additive Status List

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