テレワーク座りっぱなし対策|体の重さ・むくみを日常習慣で立て直す方法
Aug 16, 2026
「朝から夕方まで椅子から立ってない日、ある?」と聞かれたら、正直、ある。2020年の春から在宅勤務が中心になって、私も気づけば1日9時間くらい座っていた時期がある。夕方になると足首の靴下の跡がくっきり残って、階段を上るだけで太ももが張る。あれは運動不足というより、座り続けたことの副作用だと今は思っている。
テレワークが日常になった今、多くの人が同じ状態にいる。厚生労働省が公表している「テレワーカーの運動不足に関する資料」でも、在宅勤務者の身体活動量がオフィス勤務時より明確に落ちることが指摘されている。通勤で歩いていた片道15分、社内で会議室に移動していた1日1000歩、これらが全部消えた。
この記事では、座りっぱなしがなぜ体を重くするのか、そして日常で無理なく続けられる対策を、公的データと自分の失敗を混ぜながらまとめる。
この記事の要点
- WHO(世界保健機関)は成人に週150〜300分の中強度身体活動を推奨しており、長時間の座位行動を減らすことも明記している(WHO Physical Activity Fact Sheet 2022年)
- 厚生労働省 e-ヘルスネットは、日本人成人の1日の座位時間が世界20カ国中で最長クラス(約7時間)であることを示している
- ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、収縮によって下肢の静脈血を心臓に戻すポンプ機能を持つ(e-ヘルスネット 身体活動・運動)
- 座位を30分〜1時間ごとに中断し、軽く動く「アクティブブレイク」が推奨されている(厚生労働省 健康日本21)
- 水分摂取の目安は成人で1日1.2Lの飲料からの補給(厚生労働省「健康のため水を飲もう」推進運動)
毎日の習慣に取り入れやすい一本として、Five Point Detox も参考にしてみてください。
なぜテレワークで体が重くなるのか、通勤という「隠れ運動」の消失
結論から言うと、テレワークで体が重くなる最大の理由は、通勤・社内移動という「意識しない運動」が消えたことだ。
総務省の労働力調査ベースの通勤時間データを見ると、日本の会社員の平均通勤時間は片道約40分。これが往復で80分。仮に駅まで徒歩10分、乗り換えで数分歩くとして、通勤だけで1日3000〜5000歩は稼いでいた計算になる。
私自身、在宅に切り替えた最初の月、スマートウォッチの歩数を見て愕然とした。それまで平均7500歩だったのが、1200歩まで落ちた。トイレとキッチンだけで完結してしまう。
そこに加えて、社内での「隠れ動作」も消える。プリンタまで歩く、会議室に移動する、休憩室でコーヒーを淹れる、同僚の席まで話しに行く。オフィスにいた頃はこれらが1日30〜50回はあった。在宅ではデスクから半径2メートル以内で全部済んでしまう。
厚生労働省の e-ヘルスネットでは、日本人成人の平日の座位時間が平均7時間前後で、これは世界20カ国比較で最長クラスとされている。テレワークはこの数字をさらに押し上げる方向に働く。
そう。動かないことが「デフォルト」になった環境で、体の重さが出ないほうが不自然なのだ。
座り続けると体の中で何が起きているのか
座位が長引くと、まず下半身の血液とリンパの流れが滞る。理由はシンプルで、ふくらはぎの筋肉が動かないから。
ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれる。歩いたり足首を動かしたりすることで筋肉が収縮し、静脈内の血液を心臓へ押し戻すポンプの役割を果たしている。厚生労働省 e-ヘルスネットの身体活動・運動の項目でもこの機能は明記されている。
座っている間、このポンプはほぼ停止する。すると下肢に血液や組織液がたまり、夕方の足のむくみ、だるさ、重さにつながる。私が在宅初期に感じた「靴下の跡がくっきり残る」現象は、まさにこれだった。
もうひとつ厄介なのが、股関節周りの筋肉、特に腸腰筋(ちょうようきん)とハムストリングス、が縮こまることだ。90度に折り曲げた姿勢を8時間続けると、筋肉はその長さで固まる方向に適応する。立ち上がったときに腰が伸びにくい、姿勢が前傾になる、背中が張る、というのはこの結果だ。
さらに座位時間の長さは、生活習慣病リスクの指標にも影響する。国立健康・栄養研究所や複数の疫学研究では、1日の座位時間が長いほど、身体活動量とは独立して代謝関連指標に影響が出ることが報告されている(※これは効能ではなく、疫学研究における相関の話)。
つまり、体の重さは「気のせい」ではなく、筋ポンプの停止・関節の可動域低下・代謝の低下が重なった結果として現れている。
アクティブブレイク、30分〜1時間ごとに立つだけで変わる
最も費用対効果が高い対策は、30分〜1時間ごとに1〜3分立ち上がることだ。これ以上シンプルな方法はない。
WHO の身体活動ガイドライン(2020年改訂)では、成人に対して「週150〜300分の中強度有酸素活動」に加えて「座位時間をできる限り減らし、長時間の座位を軽い活動で中断する」ことが明記された。ガイドラインが座位中断を明文化したのは、これが独立した健康指標として認識されたということ。
やり方は難しく考えなくていい。私が実際に続いているのは以下のパターン。
タイマーを45分にセットする。鳴ったら立ち上がって、キッチンで水を1杯飲む。ついでにその場で足首を10回まわす。かかとを上げ下げする(ふくらはぎのポンプを起動する)。合計で90秒くらい。これを1日6〜8回。
ポイントは「運動しよう」と気負わないこと。気負うと3日で終わる。私は最初「毎時スクワット10回」を目標にして、案の定4日で挫折した。今はコップに水を注ぐついでに、足首を回すだけ。これが1年続いている。
スポーツ庁の「Sport in Life」でも、日常の細切れ活動を積み重ねる「NEAT(非運動性熱産生)」の考え方が紹介されている。まとまった運動時間が取れなくても、動いた分だけカウントされるという発想。
デスク環境を整える、姿勢と高さで疲労は半減する
アクティブブレイクの次に効くのが、デスク環境の見直し。ここは初期投資は必要だが、リターンが大きい。
厚生労働省が発表している「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」および付随する情報通信機器作業の指針では、以下の目安が示されている。
- 椅子の高さ:足裏が床に完全につく高さ。膝の角度が90度前後
- モニター上端:目線とほぼ同じか、やや下
- キーボード:肘が90〜100度で構えられる位置
- モニターとの距離:40cm以上
特に効くのがモニターの高さ。ノートPCを直接使っていると画面が低くなり、首が前に出て「ストレートネック」姿勢になる。私は在宅初期、ノートPCをそのまま食卓で使っていて、3ヶ月で肩甲骨の間が常に張るようになった。ノートPCスタンドで画面を10cm上げ、外付けキーボードとマウスに変えたら、これが劇的に楽になった。投資額は合計で6800円。
昇降デスクも選択肢に入る。座位と立位を切り替えられる机で、値段は2万円台からある。ただ、これは「立って作業する時間を作る」ためのもので、買っただけでは意味がない。うちのオフィス(Point Pharma日本代理店の作業スペース)にも1台あるが、実際に立って使うのは1日1〜2時間。それでも下肢のむくみは明らかに減る。
ふくらはぎを動かす、座ったままでもできる3つの動き
会議中や集中作業中で立てないときでも、ふくらはぎだけは動かせる。
ひとつめ、かかと上げ下げ。座ったまま両足のかかとを上げて、つま先立ちの状態を作り、ゆっくり下ろす。1セット20回。ふくらはぎのポンプが起動する。
ふたつめ、つま先上げ。今度は逆で、かかとを床につけたままつま先を持ち上げる。これは前脛骨筋(すねの筋肉)に効く。ふくらはぎと交互にやると下腿全体の循環が動く。
みっつめ、足首まわし。左右10回ずつ、両方向。足首の可動域が広がると、立ち上がったときの一歩目が軽くなる。
これらは全部、椅子から立たずにできる。ZoomやTeamsのミーティング中、カメラに映らない下半身で静かにやっていても、誰にも気づかれない。私はこれを1日3〜4回のミーティングでこっそり続けている。
厚生労働省 e-ヘルスネットの「エクササイズガイド」でも、日常生活の中で下肢を動かす簡易運動は、循環と代謝の維持に有効とされている。難しい器具は要らない。
水分補給と食事のタイミング、地味だが効く
体の重さ対策で見落とされがちなのが水分。
厚生労働省の「健康のため水を飲もう」推進運動では、成人が1日に必要な水分約2.5Lのうち、飲料から補うべき量は約1.2Lと示されている。在宅勤務だと、意識しないと1日500mlも飲まない日が出る。オフィスでは無意識に給湯室に立ってお茶を淹れていたのが、家では動かないから飲まない。
水分が足りないと血液の粘度が上がり、循環がさらに悪くなる。私は在宅を始めて半年、1日300mlしか飲んでいない日が続いた時期があり、夕方の頭のぼんやり感がひどかった。1Lボトルをデスクに置いて「午前中にこれを空にする」ルールにしたら、これが目に見えて変わった。
食事のタイミングも重要。在宅だと昼食を食べ損ねて15時にどか食い、みたいなことが起きる。血糖の乱高下は午後の眠気とだるさを増やす。決まった時間に、たんぱく質と食物繊維を含む食事をとる。特別なことじゃないが、これが崩れると体の重さも増える。
マカ、キヌア、ソバの実などの穀物・根菜類は、たんぱく質・食物繊維・ミネラルをバランスよく含む食材として日本の家庭でも取り入れやすい。南米ペルーが原産のマカは、標高4000m以上のアンデス高地で栽培されてきた歴史のある根菜で、FAO(国連食糧農業機関)の資料でも伝統食材として記録されている。日常の食事に無理なく組み込める素材のひとつとして知っておく価値はある。
企業と個人ができること、健康経営の視点
個人の努力だけで解決するには限界がある部分もある。ここは企業側の姿勢が大きい。
経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」では、従業員の身体活動促進を評価項目に含めている。認定を受けている企業では、業務時間中のストレッチタイム設定、昇降デスクの支給補助、オンラインフィットネスの福利厚生などを導入している例がある。
個人レベルでも、勤務先の総務や健康管理担当に「昇降デスクの補助制度はあるか」を聞いてみる価値はある。意外と福利厚生に組み込まれていて、使われていないだけということもある。
フリーランスや個人事業主なら、自分で環境を整えるしかない。私が使っているのは、タイマーアプリ(Toggl Track で作業を計測し、45分ごとに通知)と、デスク横に置いた1Lボトル、それとノートPCスタンドと外付けキーボード。合計で1万円ちょっと。3年使ってペイした感覚は十分ある。
まとめ、3日で挫折しない小さな習慣から
ここまで書いてきた対策を全部一気にやろうとすると、まず続かない。私も何度もやって挫折した。
おすすめは、まず1週間、以下のうち1つだけを試すこと。
1つ目、45分に1回タイマーで立ち上がって水を1杯飲む。2つ目、ノートPCの下に本を積んで画面を10cm上げる。3つ目、会議中に足首を回す。
どれかひとつが1週間続いたら、次を足す。これで3ヶ月経つと、自然に3つ全部が習慣になっている。
体の重さは、朝起きた瞬間から始まっているわけじゃない。座り続けた8時間の結果として夕方に出てくる。だから対策も、8時間の中に細かく差し込む。まとめてジムに行くより、45分ごとに立ち上がるほうが、日常には馴染む。
私自身、在宅5年目にしてやっと体の重さが「デフォルト」ではなくなってきた。まだ完璧じゃない。金曜の夜は足がむくむし、月曜の朝は腰が固い。ただ、対策をゼロにするのと、45分タイマーひとつ入れるのとでは、明らかに違う。試してみる価値はある、と思っている。
出典・参考:
- 厚生労働省「健康日本21(第二次)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 身体活動・運動 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise
- 厚生労働省「健康のため水を飲もう」推進運動 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suibun/index.html
- WHO Physical Activity Fact Sheet (2022) https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/physical-activity
- スポーツ庁 Sport in Life https://sportinlife.go.jp/
- 健康・体力づくり事業財団「テレワーカーの運動不足に関する資料」 https://www.health-net.or.jp/etc/pdf/telework_undou_tanaka.pdf
