アルコールでむくむのはなぜ?翌朝の顔と脚が重い理由を水分代謝から解き明かす

アルコールでむくむのはなぜ?翌朝の顔と脚が重い理由を水分代謝から解き明かす

飲んだ翌朝、鏡を見て「まぶたが腫れぼったい」「靴下の跡が消えない」と感じたことがある人は多いはず。私も月に2〜3回はやります。金曜の夜にビール2杯とハイボール3杯くらい飲んで、土曜の朝、顔が一回り丸くなっている。

ふしぎなのは、あれだけトイレに行ったのに、なぜ体は水を溜め込んでいるのかということ。答えは「飲んでいる最中の脱水」と「その後の反跳」にある。この記事では、アルコールがむくみを引き起こす仕組みを、ホルモン・血管・電解質の三方向から解きほぐしていきます。

薬機法の関係で「治す」「予防する」といった話はできませんが、体で起きていることを知ると、飲み方の判断材料は確実に増えます。

この記事の要点

  • アルコールは下垂体後葉からの抗利尿ホルモン(バソプレシン)分泌を抑制し、尿量を増やす(Nature Reviews Endocrinology 2018年ほか複数の生理学教科書で確認)
  • ビール中ジョッキ1杯(アルコール10g相当)で、摂取量を超える約100mLの水分が尿として失われる報告がある(American Journal of Clinical Nutrition, 1997年 Shirreffs & Maughanの研究)
  • アセトアルデヒドは血管拡張作用を持ち、毛細血管の透過性を上げ、血管外へ水分が漏れやすくなる
  • 脱水状態になった体は水分を保持しようとして、翌朝はむくみとして水が組織に溜まる「反跳現象」を起こす
  • 塩分の多いおつまみ(枝豆・唐揚げ・ラーメン締め)はナトリウム過多となり、水分保持を後押しする

毎日の習慣に取り入れやすい一本として、Five Point Detox も参考にしてみてください。

そもそも「むくみ」とは体で何が起きているのか

むくみは、血管の外、正確には細胞と細胞のあいだにある間質(かんしつ)という空間、に水がたまっている状態です。健康な体では、毛細血管から染み出た水分は、静脈やリンパ管がきちんと回収してくれる。回収が追いつかないと、指で押した跡が戻らない、あの状態になる。

間質に水が溜まる原因は、大きく3つ。血管の中の圧力が上がる、血管の壁が緩んで水が漏れやすくなる、体全体のナトリウムと水のバランスが崩れる。アルコールは、この3つ全部に絡んできます。厄介なんです。

むくみの多くは病気ではない一時的なもので、日本内科学会の一般向け解説でも「生活習慣による生理的浮腫が最多」と説明されています。ただし、片脚だけ極端に腫れる、息苦しさを伴う、朝晩でむくみの部位が変わらないといった場合は、腎臓・心臓・甲状腺の疾患が隠れている可能性があるので、迷わず内科を受診してください。

抗利尿ホルモン(バソプレシン)が抑えられる、最初のドミノ

アルコールがむくみを招く第一のスイッチは、抗利尿ホルモンの抑制です。名前が長いので、以下バソプレシンと呼びます。

バソプレシンは脳の下垂体後葉から分泌され、腎臓の集合管に働きかけて「尿として捨てる水を減らせ」と命令を出すホルモン。体が脱水気味のときにドバッと出て、水分を体内に留める。逆に水をがぶ飲みしたときは出なくなり、余分な水が尿として排出される。

ここにエタノールが入ると、バソプレシンの分泌が抑えられる。命令が届かないので、腎臓は水を再吸収せず、そのまま尿として捨ててしまう。これがビール1杯で3回トイレに行く理由です。1997年のShirreffs & Maughanの研究では、アルコール度数4%以上の飲料では、摂取した水分以上の尿が排出される、つまり「飲めば飲むほど脱水」という現象が確認されています。

私自身、ハイボールを3杯飲んだ夜に、就寝から起床まで2回トイレに起きるのは普通。夜中に喉がカラカラで水を飲む。これが起きているとき、体は静かに水を失っています。

そして、脱水を感知した体は、翌朝バソプレシンを一気に増やして水を溜め込みにかかる。これが「反跳(はんちょう)」と呼ばれる現象で、翌朝のむくみの主犯格です。夜に水を捨てすぎたツケを、朝の体が全力で回収しにいく。

アセトアルデヒドと血管拡張、顔が赤くなる理由と、むくみが結びつく

飲むと顔が赤くなる人、いますよね。私もそっちのタイプで、ビール1杯で首まで赤くなる。あの赤みの犯人がアセトアルデヒドという物質です。

エタノールは肝臓でアルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒドに分解され、そのアセトアルデヒドがさらにアルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2)で酢酸に分解される。この2段階目の酵素が弱い人は、アセトアルデヒドが体内に溜まりやすく、顔が赤くなる。日本人の約4割がALDH2の活性が低いか欠損しているという報告があります(東京大学分子予防医学 原田勝二氏らの研究)。

アセトアルデヒドは血管を拡張させる作用がある。血管が広がると、血流は増えるけれど、毛細血管の壁がゆるんで、水分が血管外へ漏れやすくなる。顔まわりは毛細血管が密集しているので、ここが最初にふくらむ。翌朝、顔だけ丸くなっているのは、これが理由の一つです。

ちなみに、二日酔いの頭痛もアセトアルデヒドの血管拡張が絡んでいると考えられており、脳血管の拡張が三叉神経を刺激するという説が有力です(日本頭痛学会「頭痛の診療ガイドライン2021」)。頭が痛くて顔がむくむ、あの朝の総合セットは、同じ物質の仕業だったりする。

電解質のバランスが崩れる、ナトリウム・カリウムの視点

むくみを語るとき、避けて通れないのが電解質、とくにナトリウムとカリウムのバランスです。

体は、細胞の外側にナトリウム、内側にカリウムを配置して、水分の分布をコントロールしています。ナトリウムが増えると、水はナトリウムを追いかけて細胞外に集まる。血管外に水が溜まりやすくなる。逆にカリウムは、余分なナトリウムを尿として排出する働きを助けます。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人男性の食塩摂取目標量は1日7.5g未満、女性は6.5g未満。ところが令和元年国民健康・栄養調査によれば、実際の平均摂取量は男性10.9g、女性9.3gと、目標を大きく超えている。塩、多いんです日本人。

ここに晩酌のおつまみが加わる。試しに、居酒屋の定番メニューの塩分を並べてみます。

枝豆(塩ゆで小鉢)約1.0g、唐揚げ4個約1.8g、焼き鳥タレ2本約1.6g、ポテトフライ約1.2g、締めのラーメン1杯約5〜6g。私が金曜の夜に食べる量をざっと足すと、10gを軽く超える。1食で1日分の塩を摂っている計算です。

アルコールで脱水気味になった体に、大量のナトリウムが流れ込むと、体は水を溜め込む方向に舵を切る。バソプレシンの反跳と塩分過多、この二つがそろって、翌朝の顔と脚が重くなる。

カリウムを含む食材は、バナナ(100gあたり360mg)、アボカド(720mg)、ほうれん草(690mg)、里芋(640mg)、納豆(660mg)などです(日本食品標準成分表2020年版)。おつまみに枝豆を選ぶなら、塩ゆでより素焼きの方が理にかなっている、というのは覚えておくと良いかもしれない。

就寝中の水分移動、なぜ「顔」と「脚」に偏るのか

むくみが顔に来る人、脚に来る人、両方の人がいます。この違いは、飲んだ後の体勢と、時間の使い方でだいたい説明できる。

立っている時間が長い日は、重力で下肢に水が溜まる。夕方になると靴がきつくなるのはこれ。逆に、飲酒後にすぐ横になると、下肢に溜まっていた水分が全身に再分配され、頭に近い顔まわりにも水が回る。夜中じゅう横になっているので、顔のむくみは朝ピーク、そこから昼にかけて重力で下に降りていく。

私の場合、金曜に飲んで土曜の朝は顔がむくむ。土曜の昼にはだいたい引いていて、代わりに夕方になるとふくらはぎがだるくなる。これ、水が上から下へ移動しているだけなんですよね。

もう一つ。就寝直前の飲酒は、寝ている間もアルコール代謝が続くため、深い睡眠が減り、夜間覚醒とトイレが増える。日本睡眠学会の一般向け解説でも「アルコールは入眠を早めるが睡眠の質を下げる」と繰り返し指摘されています。睡眠の質が下がると、リンパの流れも悪くなり、朝の回収が追いつかない。

個人的な目安として、就寝の3〜4時間前には最後の一杯を終える、というのは体感でもかなり違います。ただこれは「絶対のルール」ではなく、翌朝の体調で調整する話。

おつまみの選び方、ナトリウムとカリウムのシーソー

晩酌のおつまみは、単なる「味の相棒」ではなく、翌朝のコンディションを決める食事の一部です。

塩分の多い定番おつまみを、少しだけ視点を変えて選び直すと、体の負担は変わってきます。以下は、置き換えの一例。判断は各自の好みで。

塩から揚げ→レモンを絞る量を増やす、または蒸し鶏に置き換える。塩分を1食1〜2g節約できます。

ポテトフライ→蒸したじゃがいも+オリーブオイル。じゃがいもはカリウムが100gあたり410mgと、意外にカリウム源。皮ごと食べると食物繊維も摂れる。

締めのラーメン→味噌汁または具沢山の吸い物。味噌汁は塩分が1杯1.2g程度で、ラーメンの5分の1。しかも味噌の発酵食品としての価値がある。

ここで一点、独自の切り口を挟みます。日本の伝統的な酒席には、実は「むくみ対策」に近い知恵が組み込まれていた可能性がある。例えば、日本酒の後に出される「和らぎ水」や、飲みの締めの「梅茶漬け」の梅干し。梅干しはナトリウムが多いイメージですが、実はカリウムも豊富(100gあたり440mg)で、有機酸が代謝を後押しする。塩分と一緒にカリウムを摂る形は、江戸期の町人文化のなかで自然に成立していた組み合わせだったのかもしれない。もちろん梅干し自体は塩分が高いので摂りすぎ注意、ですが。

飲酒中と飲酒後、体に何を渡すか

ここまでの話をふまえて、飲酒中と飲酒後に「体に何を入れるか」を整理します。効能効果ではなく、水分と電解質の話です。

飲酒中は、酒1杯につき水を同量、というのが古典的なガイドラインで、米国NIAAA(国立アルコール乱用・依存症研究所)の一般向け資料でも推奨されています。ビール中ジョッキ(約350mL)を飲んだら、水を350mL。単純だけど、これができる日とできない日で、翌朝の顔がまったく違う。

飲酒後、就寝前には、水よりも「電解質を含む水分」の方が理にかなっています。経口補水液、味噌汁の上澄み、あるいはスポーツドリンクを半分に薄めたもの。ナトリウムとカリウムが両方入っている液体を、コップ1杯。

朝起きたら、まずコップ1杯の水。そして、カリウムを含む朝食を組む。バナナ1本+無糖ヨーグルト、あるいは味噌汁+ごはん+納豆。塩分を追加せず、カリウムを足す方向で組むと、体が余分な水分を尿として出しやすくなる。ここは薬ではなく、日常の食事の話です。

マッサージや温冷交代浴も、リンパの流れを助けるという意味では合理的で、日本理学療法士協会も一般向けにふくらはぎのマッサージを紹介しています。ただ、これらは「症状が出た後の対処」で、根本の水分・電解質バランスが崩れていると、効果は限定的。

「病気のむくみ」との見分け方、受診の目安

ここは大事な話です。アルコールによる一時的なむくみと、体の内側から来るむくみは、見分けがつきます。

受診を考える目安は、以下のような場合。左右非対称に片脚だけ強く腫れる。指で押すと10秒以上跡が戻らない。息切れや動悸を伴う。朝も夕もむくみが引かず、数日〜数週間続く。体重が短期間で急に増える。尿量が明らかに減った。

これらは、心不全・腎不全・肝硬変・深部静脈血栓症・甲状腺機能低下症などの初期サインの可能性があります。日本循環器学会の一般向け資料でも、両下肢のむくみと息切れの組み合わせは「早めの受診が望ましい」と明記されています。

逆に、飲んだ翌朝だけで、その日の夕方には引く、というパターンなら、生活習慣性の浮腫であることがほとんど。ただし週に何度もこの状態になっているなら、それは飲酒量そのものを見直すサインかもしれない。私自身、月に飲む回数を数えて、多い月は減らすようにしています。判断は皆さんに委ねます。

まとめ、翌朝のむくみは「昨夜の水の動き」の記録

飲酒後のむくみは、単なる「水の飲みすぎ」ではなく、バソプレシン抑制による脱水→反跳、アセトアルデヒドの血管拡張、ナトリウム過多、この三つが重なって起きる現象です。

体で何が起きているかを知っていると、次に酒席に行くときの選択が少し変わる。おつまみの塩分を意識するか、水を横に置くか、締めをラーメンから味噌汁に変えるか。どれも小さいけれど、翌朝の顔と脚に効いてくる。

飲酒そのものを否定する話ではありません。私も金曜の夜は普通に飲みます。ただ、翌朝の体が重い日は「昨夜の水の動き」の結果として読める、と思って過ごすと、飲み方との付き合い方が変わってくる気がしています。

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