発酵食品の種類一覧|日本と世界の代表例を原料・微生物別に整理
Jul 26, 2026
味噌、醤油、納豆、ヨーグルト、キムチ、チーズ、パン、ワイン。金曜の夜、スーパーのカゴを覗いてみると、気づけば半分以上が発酵食品ということがある。冷蔵庫を開けても同じだ。ぬか漬け、塩麹、豆板醤、ナンプラー。人類は、微生物と一緒に食卓を作ってきた。
ただ「発酵食品」と一括りにしても、その中身は驚くほど広い。関わる微生物は麹菌・乳酸菌・酵母・酢酸菌・納豆菌など多岐にわたり、原料も穀物・豆・野菜・乳・魚介・肉と多彩。日本の伝統食品だけでも数十種類、世界に広げれば数え切れない。
この記事では「日本と世界」「原料別」「微生物別」の3軸で、発酵食品の全体像を整理する。歴史・産地・栄養成分の客観データを添えながら、食文化と食品科学の視点で見ていく話です。効能効果の話ではありません。
この記事の要点
- 発酵食品は「微生物の代謝によって原料の成分が変化した食品」の総称で、日本の伝統食品だけでも味噌・醤油・納豆・鰹節・漬物・清酒など多岐にわたる
- 日本醸造学会は2006年、麹菌(Aspergillus oryzae)を日本の「国菌」に認定している(日本醸造学会大会 2006年)
- ヨーグルトの発酵菌 Lactobacillus bulgaricus は、1905年にブルガリア人医師スタメン・グリゴロフによって分離・記載された
- 韓国の「キムジャン(キムチを漬け、分かち合う文化)」は2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された
- 糸引き納豆100gあたりのタンパク質は16.5g、食物繊維6.7g(日本食品標準成分表2020年版 八訂)
毎日の習慣に取り入れやすい一本として、Five Point Detox も参考にしてみてください。
そもそも発酵食品とは何か、腐敗とは何が違うのか
発酵食品とは、微生物の代謝によって原料の成分が分解・変化した食品のこと。定義自体は短い。面白いのは、微生物学的に見ると「発酵」と「腐敗」は同じ現象だという点だ。人にとって有益なら発酵、有害なら腐敗。区別しているのは科学ではなく、文化と経験の側にある。
たとえばチーズは牛乳を乳酸菌とカビで変化させたものだが、冷蔵庫の奥で忘れられた牛乳が似たような菌で変質すれば「腐った」と呼ばれる。境界線は、その土地で長く食べられてきたか、安全に食べる技術が確立しているかで決まる。
発酵に関わる主な微生物は、大きく3つに分けて理解しておくと整理しやすい。カビ(麹菌・青カビ・白カビ)、酵母(パン酵母・清酒酵母・ワイン酵母)、細菌(乳酸菌・納豆菌・酢酸菌)。単独で働くこともあれば、複数がリレーする「複合発酵」もある。味噌や醤油は、まず麹菌がデンプンやタンパク質を分解し、そこに乳酸菌と酵母が加わって香りと酸味を作る、多段階の連携だ。
日本の発酵食品の主役は、圧倒的に麹菌。2006年、日本醸造学会は麹菌(Aspergillus oryzae)を日本の「国菌」に認定した。国鳥や国花はよく聞くが、微生物に国を代表させる例は世界的にも珍しい。それだけ日本の食文化に、麹が深く食い込んでいるということだと思う。
日本の発酵食品、麹から始まる系譜
日本の発酵食品の背骨は、麹だ。味噌・醤油・清酒・みりん・酢、これらはすべて麹から始まる。まずは代表的なものを一つずつ見ていく。
味噌
大豆に麹と塩を加えて発酵・熟成させた調味料。麹の原料によって「米味噌」「麦味噌」「豆味噌」に分類され、家庭で最も一般的なのは米味噌。地域差もはっきりしていて、東北は辛口の赤味噌、関西は白味噌、東海地方は八丁味噌に代表される豆味噌、九州や四国では麦味噌が主流。
豆味噌の代表格である八丁味噌は、愛知県岡崎市八丁町(現・八帖町)で江戸時代から作られてきた。大豆麹だけを使い、木桶に石を積み上げて2年以上熟成させる伝統製法が今も残る。仕込み桶に積む石は、桶の重さと同じ程度になるまで積み上げるという徹底ぶりだ。
醤油
大豆と小麦を麹菌で発酵させ、塩水で仕込んで熟成させた液体調味料。JAS規格では「こいくち」「うすくち」「たまり」「さいしこみ」「しろ」の5種類に分類され、流通の主流はこいくち。
和歌山県湯浅町は醤油醸造の発祥地とされる。鎌倉時代、禅僧の覚心が中国(宋)から金山寺味噌(径山寺味噌)の製法を持ち帰り、湯浅で作られたその味噌の桶の底に溜まった液体が、後の「たまり醤油」の原型になった、というのが定説だ。湯浅の街並みは今も醸造蔵が並ぶ景観が保たれ、日本遺産にも認定されている。
納豆
蒸した大豆に納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)を接種して発酵させたもの。あの独特の粘りは、納豆菌が生み出すポリグルタミン酸を主体とした成分によるものだ。糸引き納豆100gあたりのタンパク質は16.5g、食物繊維は6.7g(日本食品標準成分表2020年版 八訂)。
納豆の起源は諸説あって定まっていない。稲藁に自然に住み着いた枯草菌の一種が、煮豆に付いて発酵した偶発的な発見が始まりという説が一般的。水戸が「納豆の街」として全国区になったのは明治以降で、鉄道網の整備で全国流通が可能になったことが大きい。
鰹節
カツオを煮て、燻し、乾燥させ、最後に優良カビを繁殖させる「カビ付け」を数回繰り返した保存食。完成までに数カ月かかる。水分がほとんど飛んだ本枯節は非常に硬いことで知られる。
鹿児島県枕崎市と静岡県焼津市が二大産地。特に枕崎の本枯節は江戸時代から続く伝統製法で、いまも手作業でカビ付けをする職人がいる。カビ付けの目的は、脂肪分の分解と水分の除去で、これで独特の澄んだ風味と長期保存性が生まれる。
漬物・ぬか漬け
野菜を塩、糠、酒粕、味噌などに漬け、乳酸菌と酵母で発酵させたもの。ぬか漬けは米糠に水と塩を混ぜて発酵させた「ぬか床」に野菜を漬ける方式で、江戸時代前期に米の精白技術が広まったことで一般家庭に普及した。
京都の「すぐき」、長野の「野沢菜漬け」、秋田の「いぶりがっこ」、和歌山の「梅干し」、地域ごとに気候と作物に合わせた漬物文化がある。いぶりがっこは大根を燻してから米糠で漬ける独特の製法で、豪雪で大根を天日干しできない地域の知恵から生まれた。
清酒・みりん・酢
清酒は米、米麹、水を原料に、麹菌がデンプンを糖に変え、酵母がその糖をアルコールに変える「並行複発酵」という方式で作られる。糖化と発酵が同じタンクの中で同時進行する仕組みで、世界の醸造酒の中でも珍しい。みりんはもち米に米麹と焼酎(または醸造アルコール)を加えて熟成させたもの。米酢は清酒に酢酸菌を働かせて作る。清酒、みりん、酢、甘酒、塩麹。麹から派生したファミリーは驚くほど広い。
世界の発酵食品、風土が生んだ多彩な発想
視野を世界に広げると、発酵食品の顔ぶれは一気に多彩になる。気候、宗教、農作物、貿易ルート。地域ごとの条件によって、発酵の方向がまったく違うのが面白い。
ヨーグルト(ブルガリアから世界へ)
牛乳、羊乳、山羊乳などを乳酸菌で発酵させた食品。バルカン半島や中央アジアで古くから食べられてきたが、科学的な出発点は1905年。ブルガリア人医師のスタメン・グリゴロフが、ブルガリアの伝統的な発酵乳から Lactobacillus bulgaricus(現在の学名:Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)を分離・記載した。これがヨーグルトを近代的な食品として定義した最初の一歩になった。
コーデックス規格ではヨーグルトを、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus と Streptococcus thermophilus という2種類の乳酸菌で発酵させた乳製品と定義している。日本のスーパーで棚を1列丸ごと占領している「プレーンヨーグルト」の多くは、この定義に沿った製品だ。
キムチ(韓国)
白菜や大根などの野菜を、唐辛子・ニンニク・ショウガ・魚介の塩辛(アミの塩辛など)・塩で漬け込み、乳酸菌で発酵させた韓国の伝統食品。地域や材料の違いによる種類はきわめて多く、白菜キムチ以外にも大根を使ったカクテキ、水キムチ、若い大根の葉のヨルムキムチなど、日常の食卓にはさまざまなキムチが並ぶ。
意外に思われるかもしれないが、真っ赤な白菜キムチが標準になったのはそう昔ではない。唐辛子が朝鮮半島に広まったのは17〜18世紀以降とされ、それ以前のキムチは唐辛子を使わない白い塩漬けが中心だった。今の姿は、東アジアの唐辛子伝播史とセットで理解した方が輪郭が見えてくる。
2013年、キムチを冬の間の保存食として大量に漬け、家族や近所で分け合う文化「キムジャン(Kimjang)」がユネスコ無形文化遺産に登録された。ユネスコの登録名は「Kimjang, making and sharing kimchi in the Republic of Korea」。食品そのものではなく、それを作り分かち合う社会的実践が評価されている点が興味深い。
チーズ(ヨーロッパを中心に世界各地)
乳を凝乳酵素や乳酸菌で凝固させ、乳清を除いて熟成させた発酵食品。フランスだけでも数百種類、ヨーロッパ全体では極めて多くの種類がある。熟成に関わる微生物ごとに、大まかに次のように分けられる。
- 白カビタイプ:カマンベール、ブリー(フランス)
- 青カビタイプ:ロックフォール(フランス)、ゴルゴンゾーラ(イタリア)、スティルトン(イギリス)
- ウォッシュタイプ:エポワス、モンドールなど、表面を塩水や酒で洗って熟成させる
- ハードタイプ:パルミジャーノ・レッジャーノ、コンテ、チェダー
パルミジャーノ・レッジャーノは、イタリアのエミリア=ロマーニャ州とロンバルディア州の一部で作られるハードチーズ。EUの原産地呼称保護(DOP/PDO)により産地・原料・製法が厳密に規定されている。最低12カ月、長いものは30カ月以上熟成させる長期熟成型で、水分が抜けている分、100gあたりのタンパク質量が多いのが特徴だ。日本食品標準成分表2020年版のパルメザン(粉チーズ)では、100gあたりのタンパク質44.0g、カルシウム1300mgと示されている。
パン(酵母発酵)
穀物粉に水・塩・酵母を加えて発酵させ、焼き上げたもの。人類最古の発酵食品の一つで、古代エジプトの遺跡からはパン作りの痕跡が数多く見つかっている。フランスのバゲット、ドイツのプンパニッケル、イタリアのフォカッチャ、インドのナン。地域ごとの粉、水、焼き方の違いが、そのままパンの多様性になっている。
サンフランシスコの名物「サワードウブレッド」は、パン酵母を加えず、その土地の空気中や粉の中にいる野生酵母と乳酸菌で発酵させるのが特徴。日本の蔵に住み着く「蔵付き酵母」の発想に近く、菌が土地に紐付いているという感覚は洋の東西で通じ合うものがある。
ワイン・ビール・その他の醸造酒
ワインはブドウの糖分を酵母がアルコールに変える単発酵。ビールは大麦を麦芽にして糖化させたのち、酵母で発酵させる。日本の清酒は先に触れた通り並行複発酵。同じ「酒」でも、糖をどう用意するかで分類が変わる。
ジョージア(旧グルジア)では、クヴェヴリ(Qvevri)という素焼きの大きな壺を土中に埋め、その中でブドウを皮ごと発酵させる伝統的な醸造法が数千年にわたって続いている。この製法はユネスコ無形文化遺産にも登録されている。
魚醤・発酵魚(東南アジア〜北欧)
魚介類を塩漬けにして発酵させた調味料。タイのナンプラー、ベトナムのニョクマム、日本のいしる(石川県)・しょっつる(秋田県)、フィリピンのパティスは、いずれも小魚を塩漬けにして長期間発酵させることで、うま味成分のアミノ酸が凝縮された液体が得られる。
スウェーデンの「シュールストレミング」は、発酵ニシンの缶詰。缶の中で発酵が進み続けるため、缶が膨らんだ状態で流通するのが特徴で、匂いの強烈さでもよく知られる。北欧の短い夏に大量に獲れるニシンを、塩を節約しながら長期保存する必要から生まれた工夫だ。
その他:テンペ・ケフィア・コンブチャ
テンペはインドネシアの伝統食品で、蒸した大豆にクモノスカビ(Rhizopus oligosporus)を繁殖させて板状に固めたもの。豆本来のタンパク質が保たれつつ、菌の作用で消化されやすい形に変化する。ジャワ島を中心に、日常の食卓に欠かせない食材として親しまれている。
ケフィアはコーカサス地方発祥の発酵乳飲料で、「ケフィアグレイン」と呼ばれる乳酸菌と酵母の共生体で発酵させる。ヨーグルトより菌構成が複雑で、微量のアルコールと炭酸を含むことがある。コンブチャは紅茶や緑茶にSCOBY(セルロースと菌の膜)を加えて発酵させた飲み物で、名前に「昆布」の文字が入るが日本の昆布茶とは無関係。近年は欧米を中心に商業製品としても広がっている。
原料別に見た発酵食品の地図
もう一つの整理軸として、原料別に並べ直してみる。同じ大豆でも、日本では味噌・醤油・納豆、インドネシアではテンペ、中国では豆豉・腐乳と、行き先が大きく違うのが分かる。人類は同じ食材を、地域ごとに違う微生物と組み合わせて食べてきた。
豆類が原料
- 日本:味噌、醤油、納豆
- 中国:豆豉(トウチ)、豆板醤、腐乳
- 韓国:テンジャン(味噌)、カンジャン(醤油)、コチュジャン
- インドネシア:テンペ
穀物が原料
- 日本:清酒、みりん、米酢、甘酒
- ヨーロッパ:パン、ビール、ウイスキー
- 南米:チチャ(トウモロコシの発酵酒)
- アフリカ:インジェラ(テフのサワー発酵パン、エチオピア)
乳が原料
- ヨーロッパ全域:チーズ、バター、サワークリーム
- ブルガリア・トルコなど:ヨーグルト、アイラン
- コーカサス:ケフィア
- モンゴル:馬乳酒(アイラグ)
野菜・果実が原料
- 日本:漬物、ぬか漬け、梅干し、すぐき
- 韓国:キムチ、カクテキ
- ドイツ:ザワークラウト(発酵キャベツ)
- ヨーロッパ全域:ワイン、シードル、ヴィネガー
魚介・肉が原料
- 日本:鰹節、塩辛、なれずし、いしる、しょっつる
- タイ・ベトナム:ナンプラー、ニョクマム
- スウェーデン:シュールストレミング
- スペイン・イタリア:生ハム、サラミ(乳酸発酵を伴う熟成)
こう並べると、はっきり見えてくることがある。冷蔵庫のなかった時代、発酵は嗜好ではなく生存の技術だった。塩の少ない北欧では魚を発酵で保存し、湿潤な日本では大豆と米を麹で変化させ、寒冷な韓国では冬の野菜をキムジャンで蓄え、乾燥した中央アジアでは家畜の乳を発酵させる。手元の原料と気候に合わせた最適解が、そのまま食文化になった。
微生物別に見た発酵食品
今度は微生物の側から並べ直してみる。同じ「乳酸菌」でも、キムチ・ヨーグルト・ぬか漬け・サワードウブレッドと、まったく違う食品を作り分けているのがわかる。
麹菌(Aspergillus oryzae ほか)
日本の発酵の主役。デンプンをブドウ糖に、タンパク質をアミノ酸に分解する酵素を大量に分泌する。担当する食品は、味噌、醤油、清酒、みりん、米酢、甘酒、塩麹、鰹節のカビ付け。麹菌の親戚に当たる Aspergillus sojae(醤油麹菌)も、実務ではよく登場する。
乳酸菌(Lactobacillus属、Streptococcus属など)
糖を分解して乳酸を作る細菌の総称。酸味と保存性を担当する。ヨーグルト、チーズ、キムチ、ぬか漬け、ザワークラウト、なれずし、サワードウブレッド。乳製品にも野菜にも穀物にも幅広く関わる、発酵界の万能プレーヤーだ。
酵母(Saccharomyces属など)
糖をアルコールと二酸化炭素に変える。パン、ワイン、ビール、清酒の主役。味噌や醤油の熟成過程では、酵母は香り成分を生み出す役割を担う。単独ではなく、他の菌とのリレーの中で個性を発揮するタイプ。
納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)
枯草菌の一種で、稲藁に多く生息している。事実上「納豆専用」と言っていいほど、他の食品にはほぼ登場しない。加熱にも比較的強く、大豆を発酵させて粘りとアンモニア臭を生む働きを持つ。
酢酸菌(Acetobacter属)
アルコールを酢酸に変える細菌。米酢、ワインビネガー、バルサミコ酢、リンゴ酢、コンブチャなどに関わる。ビールがワインより酢になりにくいのは、ホップの防腐作用の影響でもある。
複合発酵という現実
ここまで菌別に整理してきたが、実際の伝統的な発酵食品は、ほぼすべて複数の菌が関わる「複合発酵」だ。清酒は麹菌+酵母、味噌は麹菌+乳酸菌+酵母、キムチは乳酸菌+酵母、サワードウは酵母+乳酸菌。単一の菌で完結する発酵食品の方がむしろ少ない。だから工業的に安定した品質を出そうとすると、菌の組み合わせをコントロールする技術が要になる。
栄養成分から見た発酵食品(客観データのみ)
発酵食品の栄養成分を、日本食品標準成分表2020年版(八訂)を中心に整理する。ここではあくまで数値の事実として並べる話で、健康効果への言及はしない。
- 糸引き納豆(100g):エネルギー190kcal、タンパク質16.5g、食物繊維6.7g、ビタミンK 600μg
- 米みそ・淡色辛みそ(100g):エネルギー182kcal、タンパク質12.5g、食塩相当量12.4g
- ヨーグルト(全脂無糖・100g):エネルギー56kcal、タンパク質3.6g、カルシウム120mg
- 白菜キムチ(100g):エネルギー27kcal、タンパク質2.8g、食塩相当量2.9g
- パルメザン(100g):エネルギー445kcal、タンパク質44.0g、カルシウム1300mg
- プロセスチーズ(100g):エネルギー313kcal、タンパク質22.7g、カルシウム630mg
並べて眺めると、塩分量の高さが目に入る。発酵食品の多くが塩と切っても切れないのは、雑菌の繁殖を抑えつつ、目的の菌だけを働かせる古典的な設計だからだ。参考までに、味噌汁1杯(味噌15g程度)にはおよそ食塩1.8g、キムチ小鉢1食分(50g)には約1.5gの食塩相当量が含まれる。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人男性の1日食塩相当量の目標量は7.5g未満、女性は6.5g未満とされている。発酵食品を毎日食べるなら、他の食事とのバランスを見ておきたい部分だ。
発酵食品の選び方、「生きた菌」と「加熱処理」の違い
スーパーで発酵食品を手に取るとき、意外と見落とされがちなのが「加熱処理されているかどうか」。多くの味噌や醤油は、流通の途中で発酵が進みすぎないよう加熱殺菌(火入れ)されている。保存性は上がるが、菌そのものは失活している状態だ。
逆に「生味噌」「非加熱」「天然醸造」と書かれた商品は、菌が生きたまま。要冷蔵で、時間が経つと色や香りが少しずつ変化する。使う場面によって加熱タイプと非加熱タイプを使い分けるのは、家庭でもよくある選び方の一つ。煮込む料理には加熱タイプ、味噌汁を火からおろす直前に溶く用途には非加熱タイプ、といった具合だ。
ヨーグルトの場合は、パッケージの原材料表示に菌株名(乳酸菌の種類)が書かれていることが多い。前述のようにコーデックス規格上のヨーグルトは Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus と Streptococcus thermophilus を使ったものと定義されているので、この2菌種の記載があれば「国際規格上のヨーグルト」ということになる。
キムチも同じで、韓国から輸入された発酵タイプと、日本国内で浅漬け風に味付けした「キムチ風漬物」では、含まれる乳酸菌の量がだいぶ違う。パッケージに「発酵」の表記があるか、原材料に唐辛子・魚介の塩辛・ニンニクといった伝統的な材料が並んでいるかを見ると、輪郭が分かりやすい。
なぜ日本にこれほど多様な発酵食品が根付いたのか
最後に少し編集者としての視点を残しておきたい。世界を見渡しても、単一の国でこれほど発酵食品の種類が枝分かれしている例は多くない。理由は大きく3つあると考えている。
1つ目は、高温多湿の気候。麹菌をはじめとするカビ類は、温度25〜35℃、湿度70%以上でよく繁殖する。日本の夏はこの条件にぴったりで、逆にヨーロッパの乾燥した気候ではカビ発酵は難しい。ヨーロッパで発酵の主役が乳酸菌と酵母になったのは、風土の必然だ。
2つ目は、水稲文化と麹菌の相性。米のデンプンを麹菌が糖に変える仕組みが確立したことで、清酒・みりん・酢・甘酒・塩麹といった派生食品が次々と生まれた。米を主食にしなかった地域では、この「麹ファミリー」は生まれようがなかった。日本の発酵食品の多くは、水田とセットの発明だ。
3つ目は、四季と地域差、そして保存の必要性。冬の保存食として味噌・漬物・干物・鰹節が発達し、地域ごとの気候(積雪量、海への距離、大豆の産地との距離)に応じて製法が細かく枝分かれした。秋田のいぶりがっこ、和歌山の梅干し、京都のすぐき、愛知の八丁味噌、どれも土地の必然から生まれた解答だ。
「なぜ発酵食品はこんなに種類があるのか」という問いは、突き詰めれば「なぜ人はこんなに違う場所で違うものを食べてきたのか」に行き着く。麹菌の胞子が飛ぶ湿度、ブドウの糖度、ニシンの回遊、白菜の収穫時期。すべては地理と気候の産物で、発酵食品の一覧は、そのまま人類の生活史の縮図でもある。
今日の夕食で味噌汁をすすり、ヨーグルトにスプーンを入れ、キムチを箸でつまむとき。その一皿ずつが、数百年、時に数千年の食文化の蓄積の上に乗っていることを、少しだけ思い出してもらえたら、この記事はその役目を終えたことになると思う。
