季節の変わり目に体調を崩しやすい人の食事と栄養補給の考え方|自律神経と栄養学から整理
Oct 19, 2026
季節の変わり目になると、なんとなく体が重い。朝起きられない。食欲が落ちる。そういう人が、私のまわりにも異常に多い。
気象庁の統計を見ると、春(3〜5月)と秋(9〜11月)は1日の寒暖差が10℃を超える日が月の3分の1以上ある年もある。この気温差に体がついていかない、というのが「季節の変わり目に弱い人」の正体に近い。
この記事では、医薬品的な話は一切せず、純粋に栄養学と食文化、そして自律神経と食事の関係について、公的機関のデータを基に整理していく。「何を食べるか」ではなく「どう食事を組み立てるか」の話がメインになる。
この記事の要点
- 気象庁データによれば、春と秋は1日の最高・最低気温差が10℃を超える日が頻発し、体温調節に関わる自律神経への負荷が大きくなる季節である
- 厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」では、成人女性の約65%、男性の約40%がビタミンB1・B2・B6の推奨量に届いていない
- 日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、豚もも肉100gあたりビタミンB1は0.96mg含まれ、これは成人男性1日推奨量(1.4mg)の約7割に相当する
- FAO(国連食糧農業機関)は伝統的な発酵食品を「腸内環境と食文化を支える食の遺産」と位置付けており、日本では味噌・納豆・漬物がこれに該当する
- 東洋医学の「薬食同源」思想は、季節ごとに旬の食材で体を整えるという発想を日本の食卓に根付かせた
毎日の習慣に取り入れやすい一本として、Five Point Detox も参考にしてみてください。
なぜ季節の変わり目に体調が揺らぐのか、気温差と自律神経の話
結論から言うと、気温差が大きい時期は、体温を一定に保つために自律神経が働きっぱなしになる。この「働きっぱなし」が疲労として蓄積するのが、春と秋に不調を感じやすい最大の理由だ。
気象庁の東京の観測データ(2023年)を見ると、3月の平均気温は12.9℃だが、最高気温と最低気温の差が10℃を超えた日は31日中18日あった。4月はさらに顕著で、22日。秋も同じで、10月は19日、11月は23日。真夏や真冬より、むしろ移行期のほうが日較差が大きい。
人間の体温調節は、視床下部という脳の一部が司令塔になって、血管の収縮・拡張、発汗、ふるえなどで熱を出したり逃したりしている。これを担うのが自律神経(交感神経と副交感神経)。朝7時に8℃、昼14時に20℃という日が続くと、1日のうちに何度もスイッチを切り替えることになる。
そう。体の中では、見えない場所で結構な仕事が起きている。
国立精神・神経医療研究センターの資料によれば、自律神経の働きには、ビタミンB群、マグネシウム、たんぱく質といった栄養素が関与するとされている。つまり、気温差で負荷がかかる時期ほど、こうした栄養素を切らさない食事が理にかなう、という話になる。
個人的に、ここが面白いと思っていて、日本の伝統的な食卓って、まさにこの構造を直感的に知っていたような作り方になっている。味噌汁(発酵食品+海藻のミネラル)、ごはん(糖質)、焼き魚(たんぱく質とビタミンB群)、漬物(発酵と野菜)。1950年代の農村の献立表を見ると、春先の献立に「豚汁」「糠漬け」「山菜のおひたし」が高頻度で登場する。
国民健康・栄養調査から見える、現代日本人の「足りていない栄養素」
結論:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」の数値を見る限り、現代の日本人の多くは、季節の変わり目に特に消耗しやすいビタミンB群・鉄・マグネシウム・食物繊維が慢性的に足りていない。
具体的な数字を出す。
ビタミンB1の1日平均摂取量は、成人男性で0.91mg(推奨量1.4mg)、成人女性で0.76mg(推奨量1.1mg)。達成率はそれぞれ65%、69%。
鉄は、成人女性(月経あり)の推奨量が10.5mgだが、平均摂取量は7.3mg。達成率は約70%。
食物繊維は、目標量が成人男性21g以上、成人女性18g以上に対して、平均摂取量は男性19.4g、女性17.5g。これはほぼ達成しているように見えるが、年齢別で見ると20〜29歳の女性は14.6gしかない。
この「若い世代の食物繊維不足」が、腸内環境と自律神経の関係からすると地味に効いてくる。
腸内環境と自律神経の関連については、国内外の多くの研究機関が注目している。2018年にNature誌に掲載された研究では、腸内細菌叢の多様性が、睡眠の質や気分の安定と関連することが示唆された。これはあくまで関連の報告であって、食物繊維を摂れば自律神経が整うという単純な話ではない。ただ、腸を整える発想は、日本の食生活にもともと組み込まれていたものだと思う。
私自身、30代半ばで一度、秋口にひどい倦怠感が続いて、食事記録を2週間つけたことがある。見返したら、朝はコーヒーだけ、昼はコンビニのパスタ、夜はビールと焼き鳥、みたいな日が10日中7日あった。B群も鉄も食物繊維もほぼゼロ。これで元気な方がおかしい、と思った。
ビタミンB群、疲労と自律神経の栄養学的な接点
結論:ビタミンB群は、糖質・脂質・たんぱく質をエネルギーに変える代謝の中心にいる栄養素群で、不足すると「食べているのに元気が出ない」という状態になりやすい。
B群は8種類ある(B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)。それぞれ役割が違うが、互いに補い合って働くので、1種類だけ大量に摂っても意味が薄い、というのが栄養学の基本的な考え方。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)から、B群が豊富な食材をいくつか拾う。
豚もも肉(赤身)100gあたり、ビタミンB1は0.96mg。これは成人男性の1日推奨量1.4mgの約69%に相当する。日本人の食卓で「疲れたら豚肉」と言われるのは、戦後の栄養指導の名残でもあるが、数字で見ても根拠がある。
玄米ごはん100gあたり、ビタミンB1は0.16mg、B6は0.21mg。白米の0.02mg、0.02mgと比べると10倍前後。精米の過程でB群は糠と一緒に取り除かれてしまう。
納豆1パック(50g)には、B2が0.28mg、葉酸が60μg含まれる。葉酸の推奨量は240μgなので、1パックで1日の4分の1。
卵1個(55g)には、B2が0.21mg、B12が0.5μg、ビオチンが14μg。B12とビオチンは植物性食品にほぼ含まれないので、卵・肉・魚のどれかを毎日食べる食生活は、この2つの確保に関しては合理的。
興味深いのは、昭和30年代の日本の栄養指導で推奨された「一汁三菜」の献立が、意外と機械的にB群を網羅する構造になっていること。ごはん、味噌汁、主菜(魚か肉)、副菜(野菜)、漬物。この5点を揃えると、B1、B2、B6、葉酸あたりが自然と埋まる。
ただ、現代の食卓でこれを毎食やるのは正直きつい。朝は時間がない。昼は外食かコンビニ。夜だけ気合入れて作る、くらいが現実的なラインだと思う。
発酵食品と腸、日本が1000年以上やってきた知恵
結論:味噌・納豆・漬物・甘酒といった日本の伝統的な発酵食品は、腸内環境を整える食材として国際的にも注目されており、季節の変わり目の食事に組み込む意味は栄養学的にも文化的にも大きい。
日本で味噌が広く食べられるようになったのは、鎌倉時代(12〜14世紀)に禅宗の精進料理と共に普及したのが始まり、とされている(農林水産省「味噌の歴史」)。それ以前は、調味料というより「嘗め味噌」という副食に近い扱いだった。
納豆の起源には諸説あるが、八幡太郎義家が奥州征伐の途中(11世紀)に偶然発見した、という伝承が有名。文献上の確実な記録は室町時代の『精進魚類物語』。少なくとも600年以上、日本人が食べ続けている食品だ。
これだけ長く残っているということは、単に「保存が効く」以上の価値があったはず、と考えるのが自然。実際、FAO(国連食糧農業機関)は2013年に和食をユネスコ無形文化遺産に登録する過程で、発酵食品の多様性を日本の食文化の特徴として評価している。
栄養学的な側面で見ると、味噌はたんぱく質・ビタミンB群・イソフラボン、納豆はビタミンK2・B2・食物繊維、漬物は食物繊維と乳酸菌、甘酒はブドウ糖とB群、と役割が分かれている。
ここで一つ、個人的な視点を書いておきたい。日本の発酵食品が興味深いのは、「カビ・酵母・細菌」の3種類を使い分けている点。
味噌・醤油・甘酒は、麹菌(カビの一種)を使う。これは日本独自の文化で、2006年に日本醸造学会が麹菌を「国菌」に指定している。パンのイースト(酵母)、ヨーグルトの乳酸菌(細菌)とは別のアプローチで、デンプンをブドウ糖に、たんぱく質をアミノ酸に分解する酵素を大量に生み出す。
なぜ日本でだけ麹文化がこれほど発達したのか、高温多湿で麹菌が繁殖しやすい気候、米という発酵基質の豊富さ、神道の神事に酒が欠かせなかったこと、など複数の要因が絡んでいる。この「なぜ日本だけ」を考えると、季節の変わり目に発酵食品を食べる習慣が、単なる好みじゃなく環境適応の結果に見えてくる。
春と秋、それぞれの旬の食材と、理にかなった組み合わせ方
結論:旬の食材は、その季節に体が必要とする栄養素を結果的に含んでいることが多く、春と秋では構成がはっきり違う。
春の旬を代表するのは、山菜類(たらの芽、ふきのとう、こごみ、わらび)、春キャベツ、新玉ねぎ、新じゃが、アスパラガス、菜の花、イチゴ、新茶。
山菜に共通するのは、独特の苦味。この苦味成分の多くは植物アルカロイドやポリフェノール類で、冬の間に溜め込んだエネルギーで芽吹くための「身を守る物質」。春に苦いものを食べるのは、江戸時代の『本朝食鑑』(1697年)にも「春は苦味を盛るべし」という記述があり、少なくとも300年以上前から日本人が意識していた食の知恵。
菜の花100gあたり、ビタミンC130mg、葉酸340μg、鉄2.9mg。これは数字として相当優秀で、特に葉酸は成人推奨量の1.4倍以上を1皿で摂れる。
秋の旬は、きのこ類(しいたけ、まいたけ、しめじ、エリンギ)、さつまいも、里芋、かぼちゃ、栗、新米、さんま、鮭、梨、柿、ぶどう。
秋に根菜類が増えるのは、気温が下がる時期に体を内側から温める意味で理にかなっている、と東洋医学では考える。栄養学的にも、根菜類は食物繊維とカリウムが豊富で、腸を動かす役割を果たす。
さつまいも100gあたり、食物繊維2.2g、ビタミンC29mg、カリウム480mg。しかもビタミンCがデンプンに守られて加熱で壊れにくい、という特徴がある(農研機構の資料より)。
秋の鮭(白鮭)100gあたり、ビタミンD32μg、ビタミンB12 5.9μg、たんぱく質22.3g。ビタミンDの推奨量が1日8.5μgなので、鮭の切り身1切れ(約80g)で3日分近く摂れる。
春と秋の食材を比較すると、春は「軽くて苦くて緑のもの」、秋は「重くて甘くて根のもの」という対比が見える。これは偶然じゃなくて、気候への適応として理にかなっている。日本の料亭や和食店が今でも「走り・旬・名残」で献立を組むのは、こういう感覚を言語化した結果だと思う。
食事を組み立てる判断基準、完璧より継続
結論:栄養バランスを完璧に取ろうとすると続かないので、「1日単位で足りないものを補う」「1週間単位で主菜のたんぱく源を散らす」という2軸で考えると現実的。
私がいろんな栄養士の本を読んで、自分で3年ほど試して、最終的に落ち着いた判断基準を書く。参考程度に。
1つ目:主食は「白米に一品足す」。白米だけだとB群がほぼゼロなので、玄米を混ぜる、押し麦を入れる、雑穀を加える、のどれかをやると数字が変わる。押し麦は50gで食物繊維が4.5g(玄米の3倍)。コスパがいい。
2つ目:主菜のたんぱく源を1週間で散らす。月:魚、火:鶏、水:豆(納豆や豆腐)、木:豚、金:魚、土:卵、日:肉、みたいに。これだけでB群・鉄・ビタミンD・B12が自然と埋まる。
3つ目:副菜は「色」で選ぶ。緑(ほうれん草・小松菜・ブロッコリー)、黄(かぼちゃ・にんじん)、黒(きのこ・海藻)、白(大根・玉ねぎ)、赤(トマト・パプリカ)。1食で3色入れば大体の栄養素は網羅される。
4つ目:発酵食品を毎日1つ。味噌汁・納豆・ヨーグルト・ぬか漬け・キムチのどれか。これは腸内環境の話で、継続することに意味がある。
5つ目:気温差が10℃超える日は、意識して温かいものを飲む。朝は味噌汁、昼は温かいスープ、夜は湯船に浸かる。体を冷やさないことで、自律神経の負担を減らす発想。
この5つを全部守る必要はない。1つでも2つでも、生活に組み込める範囲でやる方が長期的には勝つ。私も平日3食全部きちんとは無理で、朝食は味噌汁と納豆ごはん固定、昼はコンビニでも「サラダチキン+おにぎり+サラダ」みたいな組み合わせで折り合いをつけている。
サプリメントや栄養補助食品をどう位置付けるか
結論:食事が基本で、サプリは「食事で届かない日の補助輪」として考えるのが現実的。食事を置き換えるものではない。
厚生労働省の「健康食品の正しい利用法」というパンフレットには、こう書かれている。「サプリメントは、医薬品ではなく食品であり、特定の栄養成分を補給することを目的とした食品」。
この定義が全てで、過剰に期待もしない代わりに、過剰に警戒する必要もない。食品の一種だ。
個人的に使い分けの基準にしているのは、「3日間続けて食事記録をつけて、構造的に足りない栄養素だけ補う」というやり方。例えば、仕事が立て込んで外食が続く週は、B群と鉄が明らかに足りなくなる。そういう週だけマルチビタミンを足す。平時には飲まない。
常用すべきかどうかは、年齢・性別・妊娠の有無・服薬状況によって変わる。鉄のサプリは、男性や閉経後の女性が常用すると過剰摂取のリスクがある(厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」)。葉酸は妊娠初期の女性に特に推奨されている。一律に「飲めばいい」という話ではない。
素材そのものの話で言えば、マカ、ノニ、スピルリナ、クコの実(ゴジベリー)といった海外の伝統食材が、日本でもここ15年ほどで広く知られるようになった。それぞれ、原産地の食文化の中で何百年も食べられてきた背景があり、ペルーのマカは標高4000m超の高地で600年以上栽培されてきた記録がある(FAO資料)。こうした素材を知って、自分の食生活に合うものを選ぶ、という視点は面白いと思っている。
最後に、食事の見直しは、完璧じゃなく「地図を持つ」こと
季節の変わり目に体調を崩しやすい、という感覚は、日本に住んでいる以上かなり普遍的なもの。気象データを見ても、栄養調査を見ても、「不調が起きる構造」は存在している。
この記事で書いてきたのは、何かを食べれば治るという話じゃない。気温差という外部ストレスに対して、食事という日常の選択肢で、自分の体を少しだけ整えやすくする、という発想。
私自身、食事記録をつけ始めてから「あ、今週は豆類ゼロだな」とか「野菜は食べてるけど色が緑だけだ」とか、気付くようになった。気付くだけで、翌日の選択が少し変わる。これの積み重ねだと思っている。
完璧な食事は存在しない。でも、季節に合わせて、旬のものを、発酵食品と一緒に、色を散らして食べる、この地図があるだけで、スーパーでの選択が変わる。コンビニでの選択も変わる。
何をどう組み合わせるかは、読んでくれた人それぞれの生活に委ねたい。この記事が、次の買い物のときに少しだけ役に立つなら、それでいい。
